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恋心**言えない想い(5)

「も、やだ……」  涙を浮かべた目をゴシゴシ擦って悲しい気持ちをぬぐい捨てようとするのに、余計悲しくなる。  一向に涙が止まる気配のない自分に腹が立つ。  母さんも母さんだよ、ひとりになるために自分の部屋に逃げ込んだのにっ!  何もかもに嫌気がさす。  嗚咽を殺すためにギュッと唇を噛み締めて、ベッドから身を起こした。その直後、複数の足音と母さんの明るい声が近づいてくる。  ぼくの部屋なのに勝手にドアが開く音がして、顔を向けるとそこにはぼくが想像さえもしなかった人がいたんだ――……。

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