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叶わない恋**優しい手のぬくもり(2)

 もう、昔と違って泣き虫じゃない。でも、雅さんのことだと泣いてしまうんだ。  それだけ、あなたのことが好きなんだよ? 「シチューを持って来てくれたんだって?」 「……はい」  グスリと鼻を鳴らして返事をしたら、「もらっていくね」とお礼を言ってくれる。  たったそれだけのこと、だけど、それがとても嬉しい。  そう思うぼくはとても単純なんだ。 「さて、サクラくんはどうして泣いていたのかな?」  ようやく泣き止み、笑みを漏らすぼくに雅さんは尋ねた。 「うっ……」  返す言葉に詰まってしまう。 「うん?」  雅さんは言葉を返した。  だけどこれは言えない。  言っちゃいけない。  言ったら最後、雅さんに気持ち悪がられて、それでさよならされる。 「ずっと好きな人がいて……その人はぼくじゃない人と笑い合ってたから……」  言葉を濁して理由を話した。  そう言ったのは、ちょっとした謎かけをしたかったのと、当てつけて反応を見たかったから。 「そうか……それは悲しいね」  だけど、当然雅さんはまさか自分のことだと思わないんだろう。ぼくのことを気遣う彼は整った眉根を寄せて悲しそうに微笑んでくれる。  恋愛は男女間でするもの。けっして同性では有り得ない。  ひょっとしたら気づいてくれるかもしれない、なんて期待してしまった自分が情けない。  それに、雅さんにとってぼくは隣人の子供。弟みたいな存在。  たったそれだけなんだから……。  ギュッと苦しくなる胸を落ち着かせようと呼吸を繰り返せば胸がスカスカする。

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