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初雪**この想いを淡雪にのせて(4)

 ◆ 「やっぱり絵はいいね。見ていると荒んだ心が晴れるように清々しい気持ちにさせてくれる」 美術館から少し離れたこの小さなカフェは、一面真っ白い壁に覆われている。天井と床は木目調のデザインが施され、テーブルと椅子は木材が使われている。落ち着いたカフェだった。 加えて各テーブルごとに小さなポトスが添えられていて、なんだか優しい雰囲気だ。微笑んで紅茶をすする雅さんに、ぼくはコクンと頷いた。  今日の展覧会はパステル画だった。優しい印象を与えてくれるパステル画は、とてもあたたかだ。 「油彩も好きですけど、やっぱりあたたかみがあるのはパステル画ですね。特に今日みたいな寒い日だと、パステル画のあたたかさが恋しくなっちゃいます」  ――イヴの日。大好きな人と大好きな絵を見られて、すごく嬉しい。心が浮き立つような感じってこういうことをいうんだろうな。  嬉しくて嬉しくて、ついついニヤけてしまう。  いつまでもニヤニヤしていたらおかしな奴だと思われちゃう。  そう思って目下であたたかいものだと強調しているミルクココアの湯気を見つめた。 「よかった。元気になってくれて」  ――え?  思いがけない雅さんの言葉にどういうことかと首を傾げる。 「うん? サクラくん、最近元気がないようだったから、心配だったんだ」  そう言って、雅さんはスッと目元を細めて微笑んだ。  ぼくに元気がなかった理由……。  それは雅さんが彼女さんと一緒だったし、喧嘩してるみたいだし、雅さんが悲しそうだったし……。

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