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初雪**この想いを淡雪にのせて(6)
雅さんには、そんな強い気持ちにはならないだろうから……。
雅さんに未練があるのはぼくだけだから……。
悲しい気持ちを誤魔化すために、顔を上げて微笑んでみる。
「そうですね、あっちの生活が慣れたらまた来ます」
――これは全部嘘。
本当は、もう会わないでいるつもり。
だって会えばきっと、もっと好きになる。
会わなければ、雅さんから離れられる。
そうしたら、もしかするとこの無謀な恋心も忘れ去ることができるかもしれない。
だからぼくから会いに来ることはない。
もう、会ってはいけないんだ……。
カランコロン。
木でできた扉を開けて外に出る。
冬はやっぱり日が陰るのが早い。美術館を出た時はまだ橙色の優しい夕日が外を照らしていたのに、辺りはもうすっかり暗くなっている。
その代わり、様々な色でライトアップされた真っ白な木々が薄暗い空間に浮かび上がっていた。
その光はまるでロウソクのように薄ぼんやりと輝いて優しく明るい雰囲気を演出する。
まるで冷えたこの街に魔法をかけているみたい。
心にあたたかさを生み出してくれる。
ぼくは半ばぼうっとした夢心地で幻想的な景色を眺める。
一本道の木々に飾られたイルミネーションの下を手をつないだ恋人や、楽しそうに笑い合う家族が通り過ぎていく……。
明るい人々の笑い声が聞こえる。
今は――今だけはぼくも一緒に……。
雅さんの隣にいられていることを楽しもう。
今日という一日を心に刻もう。
そっと目を閉じて決意する。
びゅぅぅぅうう。
そしたら、さっきまであたたかい店の中にいたぼく目がけて木枯らしが吹きすさぶ。足元が冷えていく……。
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