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初雪**この想いを淡雪にのせて(8)
そこには茶髪にたくさん耳ピアスをした、いかにも軽そうな男の人がいた。たぶん、大学生くらいかな?
なんだろう?
そう思って瞬きをすると、その人はにっこり満面の笑顔で話しかけてきた。
「少しでいいんだ。暇ならこの先にあるバーでくつろがない?」
集客のバイトかな……。
「いいです。待っている人、いますから」
雅さんを待っていなくちゃなんないし、それにぼくはまだ未成年だ。お酒を飲める年になってない。ぼくが首を振れば――。
「でも、その人来ないじゃん? ここ、寒いでしょ? ここんなところで待ち合わせるより暖かいところの方がいいじゃん? キミ携帯持ってるでしょ? その人と連絡付けてさ、ね?」
グイッ。
一度断ったのに、男の人は冷たくなったぼくの手を無理矢理引っ張った。
「いいです、ほんとに困りますから!!」
握られた手を振りほどこうとするけど、この人も集客に必死なんだ。なかなか繋いだ手を離してくれない。
「離してください、ほんとに迷惑なんですっ!!」
断るのはこれで何回目になるだろう。前のめりになりながらもベンチから腰を離さないようにと踏ん張っていたら……。
……タン。
ふいに、ぼくと男の人の間に長い腕が伸びてきた。
ベンチにもたれるようにして男の人と対峙する。
その人は、オレよりも背が高くて、スラッとした体型に、漆黒の髪をした――。
……雅さん。
「ごめん、この子に何か用?」
「な、なんでも……」
雅さんと向き合った男の人は、自分が不利だと感じたのか、背中を向けてそそくさと逃げていった。
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