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初雪**この想いを淡雪にのせて(9)
「サクラくん、大丈夫? さっきの奴に何もされてない? 遅くなってごめんね」
「え、あ……」
何が起こったのかわからなくて、呆然としているぼくの顔を覗き込んでくる。
「あっ……」
ダメ。
顔、近い!!
「あ、わわっ!!」
大好きな人との距離の近さにさにびっくりして体を反らせば、寒さでガチガチに凍った体はいうことをきかなかった。
視界が半回転してコケるって思ったら……。
パフン。
柔らかい布が顔に当たった。
あれ?
不思議になって瞑った目をそっと開けると、そこには長いまつ毛。すっと通った鼻に、薄い唇をした雅さんの顔があった。
「大丈夫? 寒かったものね。体が冷えちゃったんだね。ごめんね、もう少しカフェで待っていてもらえばよかった」
「あ、いえ。あの、えっと、いえっ!!」
自分が何を言いたいのかわからない。
今日はずっと動揺しっぱなし。
――恥ずかしい。
雅さんの顔を真っ直ぐ見つめることさえできなくて、視線を逸らす。
「はい、どうぞ」
そうしたら、伸びてきた手がそっと握らせてくれたのは、あたたかい缶コーヒー。
もしかして、これを買いに行っていたんだろうか?
逸らした顔をまた上げて雅さんを見る。
目を細めて笑う雅さんの表情が、とても優しくて……。
「本当はショップを探したかったんだけどね、自販機しか見当たらなくて。この近くにはないらい。広場にあるそうなんだ。もう少しこれで我慢してくれる?」
広場?
ショップ?
――え?
いったい何を言っているの?
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