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初雪**この想いを淡雪にのせて(10)
あまりにもパニックになりすぎて、雅さんの言っていることがわからない。それでも何かリアクションを取らなきゃと思って、コクコクと何度も頷いた。
「よかった。それじゃ、もう少し歩こうか」
そう言って、歩きはじめる雅さんの手が伸びてくる。缶コーヒーを持つ手とは反対側の手が包まれた。
ドクン、ドクン。
心臓が何度も恋心を強調してくる。
繋いだ手が痺れていくのがわかる。
「あの、あのっ、手!!」
繋いだ手を離してくれるどころか、少し強く握られたと思うのは気のせいだろうか。
どうしよう、どうしよう。
こんなんじゃ、雅さんを好きだってバレてしまう。
「うん?」
「て……を…………」
離して。
離さないで。
ふたつの想いが交差して、ぼくの口が閉じてしまう。
「手? ああ、寒いからね。もう少しこれで我慢ね」
そう言って微笑む雅さんの表情がぼくの心を震わせる。
ダメ。もう何も言えない。
ぼくは熱を持った顔を俯けた。
ドクン、ドクン。
どうか繋いだ手から心臓の音が聞こえませんように……。
願いながらライトアップされた並木道を歩く。
もう木枯らしが吹いても寒くない。
ほわほわした妙なあたたかさが、ぼくの心を芯からあたためてくれる。
ぼくと雅さんは同性だ。他人の目から変な誤解をされるかもしれない。そう思うのに、繋いだ手が気にならないのは、きっとイヴっていう特別な日だから……。
神様、もう少し。
もう少しだけ、この時を――……。
神様にお願いしながら雅さんの整った横顔をこっそりのぞき見る。
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