27 / 41

初雪**この想いを淡雪にのせて(13)

 緊張して、繋いでいる手のひらに汗をかいてしまう。  ぼくの手は雅さんをもっと求めて強く握ってしまう。 「あの……ぼく……雅さんのこと……」 『好きです』  雅さんに想いを打ち明けようとした時だった。 「あっれぇ? 雅じゃん!!」  後ろから、女の人数人の声が……聞こえたんだ。びっくりして自分から繋いでいた雅さんの手を離してしまった。  5、6人いたその人達はたぶん、雅さんの学校の知り合いなんだろう。雅さんを囲んだ。 「どうしたの? 今日は絢音と一緒じゃないんだ。アレ? この子は?」  肩まであるゆるく巻いた金髪をクルクル指に巻きながら、気怠そうに尋ねるひとりの女の人は、雅さんの隣にいる不釣り合いなぼくを見て言った。 「この子は俺の近所に住んでいる子なんだ。この近隣に美術館ができたって聞いて、今日は付き添いをお願いしたんだ」 「なるほど、たしかに。それじゃあ、絢音じゃ役不足かもね。あの子、どっちかっていうと賑やかな空間の方が好きだし? 美術館っていう柄じゃないよね」  雅さんが苦笑しながら返事をしたら、また別の女の人がうんうんと相槌を打つ。 「ってことは、明日が本番の絢音とクリスマスデート?」  ――っつ!  聞きたくない。  そんな話、聞きたくない。  知らない人達と雅さんの彼女さんとの話なんて……聞きたくない。  今もしも、この場所からぼくがいなくなっても誰も気づかない。たとえ、雅さんであっても……。  雅さんが好きなのは彼女さんで……ましてや男のぼくじゃない。  ぼくはただ、雅さんが興味あった美術展への付き添い人……。

ともだちにシェアしよう!