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初雪**この想いを淡雪にのせて(14)
……馬鹿だ。
そんなこと、わかっていたハズなのに……。
悲しい気持ちを抱えているぼくをよそに、雅さんと雅さんのお友達は談笑している。
――いやだ。
この場所に居たくない。
ぼくじゃない誰かを想っている雅さんの話なんて聞きたくない。
ズキン、ズキン。
痛む胸を押さえて、ぼくは一歩後ろへ下がった。
雅さんは後ろを向いているし、雅さんの知り合いさん達は雅さんに夢中だ。
ぼくは滲んでいく視界のまま、踵を返して元来た道へと走った。
「はあ、はあ」
――知っていた。
知ってるハズだった。
雅さんは、絢音さんが好きで、お付き合いしていること……。
しかもぼくとは同性。
馬鹿だ。
両想いになれるかもしれないなんておかしな期待をして、告白しようとして……。
「ぼくって、ほんと……」
ものすごく馬鹿だ……。
恥ずかしい。
消え去りたい。
さっき雅さんと通った一本道は、夕食時だからか誰もいない。チカチカとイルミネーションだけが光る中を、ぼくは走る。
それが余計に寂しくさせる。
余計に、孤独にさせる。
やがて駆けていた足は、あまりの悲しみのせいで速度を失い……止まった。
「っく……」
必死に泣くまいと押し止めた一粒の涙が流れ、ポタリ、ポタリと地面にシミをつくっていく。
悔しくて、苦しくい胸を抑えるために屈めば、買ってもらったブルーのマフラーが目に入った。
「みやびさん……っふ……」
腰をかがめてマフラーに顔を埋める。
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