32 / 41
初雪**この想いを淡雪にのせて(18)
「雅さんには恋人さんがいるでしょう?」
いい加減なことを言わないでほしい。
ぼくは体をくねらせて雅さんの腕から抜け出した。
雅さんからの思いもよらない返事が信じられなくて首を振る。
雅さんは苦笑していた。
「絢音のこと?」
他に誰が居るって言うんだろう。
ふざけるのもいい加減にしてほしい。
「雅さん!! ぼくのこと馬鹿にしてる? 同性を好きなのおかしいと思ってるんでしょ!」
同性相手に恋なんて有り得ない。
馬鹿にするのは当然だと思う。
でも、だけど……ぼくの真剣な気持ちを受け流すなんてひどい。
この想いはいつだって本気なのにっ!!
「本気なのに……ひどいよ……」
また、目から溢れた涙が頬を伝いはじめる。
こうやって好きだと打ち明けても恋心を認めてくれないのは当たり前。
だってこんな感情、おかしい。
それでもぼくは深く傷ついてしまう。
泣くな。
泣いたって何も変わらない。
「サクラ、よく聞いて、俺は……」
いやだ。
聞きたくない。
ぼくの気持ちを理解できてない雅さんの言葉なんて聞きたくないよ。
「も、やだ……」
泣いたって何も変わらない。
この恋は実らないこと、わかっていたのに。
わかっていたはずなのに……!!
泣くな。
泣いちゃダメ。
それなのに、大粒の涙は次から次へと零れ落ちて頬を濡らす。
こんな泣き虫なぼくも嫌い。
大嫌いだ!!
泣き止みたくてぼくは思いきり自分の袖で目を擦る。
何度も強く擦るから、目がひりひりする。
「そんなに強く擦ったら傷になってしまうよ?」
いいよ。
傷だらけになっても困る顔じゃないのはもう知ってる。
ぼくがどんな顔になろうが雅さんには関係ない。
「いい……傷になっても困らない、からっ」
ごしごし、ごしごし。
どんなに強く擦っても涙は引っ込まない。
「もう、やぁ……」
ともだちにシェアしよう!