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初雪**この想いを淡雪にのせて(21)
「小さい頃、君は同じ年頃の子にいつも名前のことで揶揄されていたでしょう? その度、俺に縋ってくる君がどうしようもなく可愛くて、放って置けなくなった。この純粋な褐色の瞳の中に、いつか自分だけを入れて微笑んでほしいと、いつの間にかそう思うようになっていたんだ。それが恋だと気づいたのは、俺が高校に入ってからだ」
また、こぼれ落ちた涙。その涙を雅さんの親指が掬い取ってくれた。
雅さんの真剣な表情がぼくを見下ろす。
戸惑いを隠せないオレの口が何度も開閉を繰り返す。
そんなぼくをよそに、雅さんはさらに追い込んでくる。
「でも、まさかサクラくんも俺を好いていてくれてたなんてね。もしかしたらと薄々気がついてはいたんだが、やはり嫌われると思うと怖くて、一歩踏み出すことができなかった。以前、サクラくんが言っていた、『気になっていた人に振られた』と泣いていた人物がまさか俺だったなんて……。強制的に絢音と付き合ったことは悔やまれるけれど、こうしてサクラくんから嬉しい告白まで聞けたわけだ。これもこれでいいかもしれない」
そう言うと、雅さんの手にあったマフラーがふんわりとぼくの首にかけられた。
一気にあたたかくなるぼくの体と心。
「あの、あの!!」
「うん?」
で、けっきょく、どういうこと?
やっぱり雅さんの言っている意味がわからなくて訊ねると……。
「つまりはね、絢音に何を言われようとも是が非でも別れてもらって、サクラくんと付き合う。そういうことだよ」
ああ、どうしよう。
嬉しくてまた涙が溢れてくる。
「みやびさん……」
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