37 / 41
夢、覚めて……。(前編)
ピピピピ……。
午前8時。
目覚まし時計が朝を知らせる。
だけどまだ眠い。
それに今日から冬休みだから別に早起きしなくて良い。
放っておいてほしい。
それになぜだろう。
目の周りがひどくヒリヒリする。
ヒリヒリ、ヒリヒリ。
目の周りの痛みも、耳元で鳴る目覚まし時計にもイライラする。
「もうっ!!」
半ば乱暴に目覚ましボタンを押した。
「サクラ~」
けたたましい音がやっと終わったと思ったら、次はなに!?
母さんの声もして起き上がると、すぐにノック音が聞こえてドアが開いた。
部屋に入ってきたのは母さんではなく――。
一重のきりりとした涼しい目元に背の高い、森野 雅さんが立っていた。
「み、みやびさんっ!?」
「サクラくんお早う。目、やっぱり腫れてるね……」
慌てて起き上がるぼくの顔に伸びてくる雅さんの骨張った指。
心配そうにぼくの顔を覗き込んできてます。
だけどぼくはそれどころじゃないっていうか。
だって寝起きだし、髪だって寝癖ついてるし。
それにそれにパジャマだしっ!!
あとあとあとっ!
「顔、近い……」
ぼくの顔、ボンっと音を立ててしまいそうなほど熱くなっているのがわかる。
恥ずかしくて布団を口元まで引き上げる。
「サクラくん、可愛い」
くすくす笑っている雅さん。
……そう言う雅さんは相変わらず格好いいです。
あわあわしながらそんなことを思っていると、目尻にあった指先がぼくの頬に触れた。
ほんの少し上を向くよう、そっと顔を掬い上げられたかと思えば――。
ともだちにシェアしよう!