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夢、覚めて……。(後編)

「ん、むぅ!」  弾力のあるがぼくの口を塞いだんだ。  それから、ちゅっていうリップ音。 「み、みやびさんっ!?」  あまりにもびっくりして裏返る声。  おかげでどうして家に来たのかとか、質問が頭からすっぽ抜けてしまう。  どうしてキスしたの?  いったいどういうこと? 「えっと、えっと、えっと!」  ぼくの頭は真っ白だ。 「昨日、すごく寒かったから風邪ひいてないかな、と心配したんだ」  昨日?  寒い?  何を言っているの?  やっぱり何が何だかよくわかっていないぼく。  そんなぼくを、力強い腕がギュって抱きしめる。  雅さんの体温があたたかくて……。  腕の力も強くて……。  起きたら好きな人がいて……。  こんなの、こんなの……。  どうしよう。  嬉しくて泣きそう。  ぼくは広い背中に両手を回した。  ギュ……って雅さんのお洋服を握り締める。  すごくドキドキする。  だけどそれだけじゃなくって……。  なんだろう、すごく安心してしまう。  だから最初はドクドク煩かった心臓が勝手にゆるやかになっていく……。  おまけに、トクン、トクン、と規則正しく鼓動する雅さんの心音も優しくて心地いいんだ……。  そして、ぼくはまた、目を閉じてしまう……。 「すき……」  微睡む中で、ぼくは雅さんへの想いをそっと口にする。 「う~ん。安心してくれるのは嬉しいんだけど、あんまり無防備なのも考えものだな……」  どこか遠くの方で、ほんの少し困っているような、呻る声が聞こえた……気がしたんだ。  《夢、覚めて……。/完》

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