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クリスマス(前編)
「あ、起きてきたわ」
「お早う、サクラくん」
今日は25日。クリスマス。
今日から学校もおやすみで、特にすることがないぼくはパジャマのまま、大きなあくびをしながらリビングに向かった。
――んだけど……。
「へっ? 雅さん!?」
艶のある黒髪にきりっとした目。
ああ、やっぱり格好いいな……。
じゃなくって! どうして雅さんが家にいるの?
びっくりして瞬きを繰り返すぼくは、いつの間にか眠気が吹き飛んでいた。
「あんた今日、雅くんと出掛ける約束してたんでしょう? 早く支度しなさいな。雅くん、ずっと待っててくれたのよ?」
「えっ?」
お出かけ?
支度?
いったい何のことか、さっぱりわからなくて小首を傾げたままでいると……。
「昨日、約束したの覚えてないの?」
と雅さん。
「きのう?」
昨日はえっとイヴで、たしか……。
展覧会に行って……。
それから――?
「ダメよ、この子忘れてるわ」
「あはは、いろいろあったもんね」
「いろ、いろ……」
雅さんの言葉に何か引っかかった気がした。
すると、昨日の出来事が頭の中で蘇ったんだ。
ボンッ!!
顔が一気に火照ってくる。
「――っつ!」
どうしよう!
ぼく、雅さんと両想いになったんだ!
それでえっと、クリスマスに一緒にお出かけしようっていうことになって……。
「あ、思い出してくれた?」
「あ、あの。ぼくっ!! 着替えてきますっ!」
部屋に向かって慌ててダッシュ!
あわわわ、
あわわわ!
ひたすら焦るぼくはパーカーとズボンをタンスから引っ張り出す。
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