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16.傍に

「は~ほんまガルはアホやわ~」 「……うっせぇ」  腕に包帯を巻かれながらため息をついた。ここは病院だ。ただ普通の病院じゃない、正規の病院じゃないといえば伝わるだろうか?マフィアやギャングたちのいく闇医者みたいなとこだ。 「俺もな~わかるよ~?彼氏さん倒れとったらまぁキレるやろけどさ~?一人で20人相手すんのはほんまアホとしか……」  結局あの後、敵の増援もあって20人以上応戦していたらしい。必死で撃っていたから自覚は無いのだが。必死になって暴れまわっていたら増援を連れた谷川に救われて、今に至る。 「なんで彼氏って知ってんだてめぇ」 「自覚ないんか~?いっつも惚気とるくせに」  手当は終わったらしく背中をポンポンと叩かれる。幸い俺のけがは大したことが無い。問題は……。 「うぉん……」  隣のベッドに目を向けた。 「…まだ、起きひんなぁ」  王は俺より先に病院に搬送されている。処置も終わってベッドで横になっているが目を覚ます気配はなかった。けがは酷く、特に足が見ていられないことになっている。医者には切り落とすことになるかもしれないとまで言われたほどだ。どうにか切らなくて済んだらしいが…。 「うぉん、ショックだろうな」 「まぁなぁ~生きとるだけマシや思えるんやったらええけど」 「死ぬよりはいいかもしれないけどな…。俺の方がショック受けてんのかも」  今まで、こんなに怪我をさせてしまったことなんてない。守れなかったという気持ちだけが膨れ上がっていくようだ。 「まぁ今日の所は帰るか~?」 「…。ここで寝てくわ。俺もケガ人だし寝てても変じゃねーだろ」 「せやけど…。いや、いいわ。明日見舞いに来たるで大人しくしとき」  谷川はそのまま上着を羽織って病室から出ていった。しんと静まり返った部屋に俺と王だけになる。  静かになると寂しさがこみ上げる。一緒にいるはずなのに、漠然とした孤独感があった。 「一緒に寝るって…言ったけどさ……」  こんな、こんな結果になるなんて思わなかった。いつもみたいにいちゃいちゃして寝るもんだと、思ってたのに。隣から寝息が聞こえてくるだけ安心できるんだが、最悪の結果でもある。まぁ、計画自体はうまくいったらしい。俺たちがドンパチやってる間にパパたちは東京に進出してきて今はそっちで抗争してる。パパたちがかなり有利で、もう終わりそうと聞いた。 「平和だったらさ…毎日いちゃいちゃできんのかな…」  夢物語ではあるけれどそう思うこともあるのだ。比較的平和な国に生まれて、そこで住んでいたら?はたまた戦争も抗争もない世界で生まれていたら?そんなことを考えることもある。 「でも…そしたら出会うこともなかったのかな…」  俺が出会ったのは俺がスパイとして送り込まれたからだ。その出会いがない世界は意味が無いようにも思う。運命は意外と残酷だ。 「…おやすみ」  少しでも寂しくないようにと王の方を向いて眠ることにした。俺が起きたときには目が覚めているといいな。おやすみ。

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