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後日談 ウサギは……?
「チケット取れてよかったですね」
「うっひょ~!絵本の中みたいだぜ!」
王 が退院ししばらくたってから、ずっと行ってみたかったウサギランドに来ている。もちろん王と二人きりで。結構前にできたテーマパークだがどんどん新しいアトラクションも増えているらしく、飽きずに遊べるらしい。俺たちが来たのは初めてだから新しいとか古いとかはわからないがファンタジーの世界に迷い込んだかのような感覚を覚える外観は素敵だ。
「凄いですね、テレビかネットで取り上げられているのを見たことはありましたが圧巻です」
いたるところにうさぎ、うさぎ、うさぎ。着ぐるみ…と言ったらファンは怒るのだろうがそれが歩いていたり、うさ耳を付けた客もたくさんいる。そんな華やかな客を見て言った。
「俺もあれ買おうかなぁ」
「…兎になるんですか?…………ふむ」
「んだよ」
「貴方がかわいいものが好きなのは知っています。ですがああいったものを身に着けるというのは…ありていに言えば”萌え”というか…、いえ正直に言います。ちょっと興奮しますね」
「ヘンタイ」
俺は昔からずっと兎が好きなんだ。種類は問わずたち耳でもたれ耳でもでっかくても小っちゃくても好きだ。だからほしいのだが…そういう目で見られるのか…。王 らしいとは思うが。
「ああ、勘違いしないでくださいね。性的な興奮とは違いますから。これは…その。恋愛的なというか…」
「どう考えても墓穴ほってんぞ」
こういう人なんだと理解はあるものの、人のいる場所ででかい声で言ってほしいことではない。
「まぁ買わないでくださいとは言わないので」
「俺が買ったらお前も道連れだけど?」
「ちょ、ちょっとなんで私まで…」
「そりゃ片方だけってのは不公平だからだよ。それにお前だけつけてなかったら浮くぜ?」
慌てる王を引っ張ってアクセサリーショップに向かう。いかにも子供か女性向けのカチューシャばかりだがむしろそれがいい。俺は好きだ。
「待ってください!貴方は似合うでしょうが私は…!」
「大丈夫大丈夫俺が見繕ってやるよ」
かわいいアクセサリーやアパレル関係のグッズが並ぶ店に入っていく。全部うちに入荷したいくらい可愛い。まぁ限定商品なのだろうし無理だがそれくらいかわいいということだ。
嫌がる王を無理やりショップに引きずり込んで一面に並んだグッズを手に取った。これもいいし、あれもいいな…とみていると新商品らしき棚にスチームパンクデザインのウサギの耳がある。
「これなんてどうだ?いつもスチームパンクならつけてくれるし好きなんだろ?」
「え?あ、ああ、いや、その…あれは貴方がお揃いでと言うのでつけているだけで…」
「じゃあ俺が言えばあんなのでもいいのか?」
とびきりファンシーでかわいいものを指さすと嫌だと首を振った。
「もう、これでいいですっ!あ、あんなのこの歳でつけられるものですか…っ」
「まだ若いと思うけどな~」
デザイン違いのウサギ耳のグッズをもって会計へ向かう。王はやっぱり恥ずかしいらしくまだ文句を小さな声で言っているが聞こえないふりをしてグイグイ引っ張った。もともとこうするつもりだった。絶対嫌がると思っていたがそれでも初めてきたテーマパークだ。思い出をたくさん残しておきたい。あと何回、お前と思い出を作れるかなんてわからないから。
「ほ、ほんとうにこれ…」
「嫌ならいいよ、俺は気に入ったからつけちゃうけど~」
躊躇する王のことは気にしないで次はあっちと引っ張った。今日一日で回りきれるのかわからないくらい広い園内だ。早くいかなきゃ。
「もう、ガル…。急ぎすぎですよ、こけないでくださいね」
「だって待ちに待ったデートだぜ?めいっぱい楽しまないと損じゃん!」
「……………ばか」
振り返ると頬を染めながらもうさみみを付けた王がいた。そう来なくっちゃ。まだ日は高いけれど夜が恋しくなるくらい王のことが欲しくなる。大好きだよ、これからもずっと。
「次どこいこっかな~ジェットコースター…は心臓に悪そうだからゆったりしたやつの方がいいよな~」
「いいですよ、どこでも。抗争より心臓に悪いものなんてありませんから」
「ほんとかよ…」
”貴方とならどこへでも”そう心から思える関係でありたい。今日はハッピーハッピーデー!!
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