7 / 26
4.5.過去
俺が幼かったころ、声も出せなかったころ、王 はよく俺を蹴飛ばしてはストレス発散していた。理解できない言葉も多かったがはっきりと何度も”野良犬”と呼ばれていることは分かっていた。中国語は全部は分からない。でもそれは俺に向けられた悪口というのはよくわかる。俺がそんなに虐げられながらも彼のもとにいた理由は…よくわからない。逃げたってよかったのに彼の本心はそうじゃない気がして傷だらけになりながらそこにいた。
最初はそうやってうざそうに蹴飛ばすだけの彼だったが次第に俺のことを大事にするようになっていった。きっかけは多分恋人に振られて薬に溺れ始めたころ、頼れるのが俺しかいなくなったことだと思う。
そうだとして今更好き、とか言われてもという気持ちは少しだけある。あんなに蹴飛ばしておいて。
…でも俺も依存してるところがある。王 がいなきゃ今の俺はいない。だから受け入れることだって必要なんだ。そう思う。
なんて考えても答えが出るわけじゃない。また起きたら本人に聞かなきゃな。好きにもいろんな種類があるんだし。
共依存…だったのかもな。
がらじゃないや、もう、寝よう。
ともだちにシェアしよう!