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第3話 ひなチャン

 俺のひなチャンは、隣の家に住んでいる二つ下の従弟。もの心ついた時には横に居るのがあたりまえで、食べてしまいたいくらい可愛い。  自分の恋愛のベクトルが友達とは違う方向に向いているんじゃないかと気が付いたのは小学校五年生で担任の黒岩先生に恋したとき。大学出たばっかの足の速い先生で、頭撫でられると体の違うところが反応した。  だけど、可愛いひなチャンには知られたくなくて内緒にしてた。あの日、もしかしてと思ったけれど、やっぱり見られていたんだと知った。  必死な顔で、誰にも言わないという可愛いひなチャン。  「すっごい、美味しい!母ちゃんの飯より数倍美味い!」  目をきらきらさせて本当に美味しそうに食べる。ひなチャン、そんなに喜ばれると嬉しくなっちゃうよ。  「さて、陽向君。ここで質問です」  「……?」  「なぜ、ここで食事をしているのでしょう?」  「えっと、かっちゃんの秘密を誰にも言わないように?」  「んー、惜しい!」  「惜しい?」  「惜しいね、あと一歩。さて、ドライブにでも行こうか?」  「行く、行くっ」  ひなチャンはいつも、後をついてくる小さくて可愛い従弟……中学に上がった時、ぶかぶかの新しい制服を着て、玄関でにこにこしている姿に小さい弟が少しだけ成長したようで嬉しかった。  その三年後、俺と同じ高校の制服を身に着けたひなチャンはいつの間にか、俺よりでかくなっていて小さい弟じゃなくなっていた。それでも俺にとっては可愛いひなチャンに変わりはない。  「ひやあ、ここ夜来ると風景全く違うんだね、今まで来たことないや」  「だろ?ここから街を見下ろすと綺麗なんだよ、知ってる?」  「だから、来たことないってば」  けらけらと笑いながら、俺に手を引かれていると言う事実に気が付いていないひなチャン。どこへ連れて行っても喜んでくれる可愛い子、だけどもう立派な大人のようななりをしている。  「さて、もう一度質問です、なぜ今日は食事をしてドライブまでしているのでしょうか?」  「え、かっちゃんの秘密を誰にも言わないってことじゃないんだよね?」  「二人の秘密を誰にも言わない事だよ」  そう伝えて、可愛いひなチャンにキスをした。驚いて氷像のようにカチコチになっている。  ひなチャン、知らなかった?俺の本命は君なんだよ。

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