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第9話 真夏夜の夢
かっちゃんはするっとベッドから抜け出した。
「ひなチャン、俺先にシャワー使うね」
え?何もしないの?
いやいや、違う。落ち着け俺、何かするってのも変だろう。
俺は何を期待しているんだ?いや、だって「好き」って言われりゃ誰だって意識するよね。なのにこの仕打ちは何なの。
俺の事好きってのは単なる冗談なのかな。冗談で言って良いことと駄目なことがある。好きって、好きってそれは駄目だろう。
もしかしたら、俺がかっちゃんの事が好きなのかな?頭の中がぐちゃぐちゃになりそう。バルコニーに出て、外を眺める。海辺は太陽に照らし出され、波がきらきらと光っている。まばらに人の歩くビーチには昨日の嫌な奴が手を振っていた。
ビーチに出るとまた徳永ってやつが、かっちゃんのそばに寄って何か耳元で話している。
「あのさ、離れてよ」
くくっと笑うと、変な虫野郎はかっちゃんに向かってウインクをして離れていった。
「かっちゃん、あいつ何?」
「え、何って?」
「だから、あいつだよ。わかんないの?かっちゃんの事が絶対に好きなんだよ」
「へ?」
「そんなの見てれば分かるじゃん」
「いや、えっと誤解してるから説明するけど、徳永は丸山と付き合っているから」
かっちゃんの指さした先を見ると、昨日の夜はいなかった男性が徳永というやつの腰に手をまわして歩いていた。
「ねえ、それって焼きもち妬いてくれたってこと?」
「え、ええっ!ち、違うっ」
「顔真っ赤だよ、ひなチャン」
「違うから、本当に違うって。ただ、かっちゃんが変なのに引っかかったら困るから」
「んじゃ、ひなチャンがずっとそばにいて見守っててよ」
「う……」
「ん?何?返事聞こえなかった」
「泳いでくる!」
それだけ言い残すと、俺は海に飛び込んだ。
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