赤井との生活で勉強が遅れ気味な君島。 勉強に集中しすぎて赤井が帰ったことに気づくのが遅れたけど…。 ー　ー　ー　ー　ー　ー　ー　ー　ー　ー /君島side 「お、重かったぁ」 玄関のドアを閉めた瞬間に俺はリュックを肩から下ろした。 とはいえこのままここに置いておくこともできず、俺は少し休んでからまたリュックを持ち上げて部屋の奥へと運ぶ。 簡素なテーブルの横まで運び、俺はそのままベッドにダイブした。 しばらく布団の心地よさを味わいながら、ちらりと教科書やノート、そしてプリントでぱんぱんのリュックを見て小さくため息をついた。 ＊　＊　＊　＊　＊ 遡るは今日の午後４時過ぎ。 帰り支度をした俺は早く家に帰って休んだり早退した分の授業を取り戻そうと、教科書とノートが詰まったリュックを持って教室を出た。 祓川が授業のノートを貸してくれたからこれで安泰だと思いながら廊下を歩いていたら、後ろから俺を呼び止める声が聞こえて振り返る。 「日比野先生？」 そこにはたくさんの書類を抱えた、俺のクラスの担任であり、英語の授業を受け持つ日比野先生がいた。 この学校は、生徒だけでなく先生方も赤井くんの事を怖がっている。 そのために、生徒だけでなく先生も赤井くんと一緒にいる俺の事を厄介者や邪険に扱うか、愛想笑いですぐ逃げる人ばかり。 だけど、日比野先生だけは他の生徒のように俺に接してくれる。 日比野先生だけは俺も唯一普通に話せる先生だった。 「今日は赤井と帰らなかったんだ？」 「はい、先に帰るってメールが来たので、今日は最後まで授業出れたんです」 「君たち日数やばいんだから、赤井にもバイト早退ほどほどにしとけって言っといてよ」 「はーい」 こんな感じで赤井くんのことについても普通に喋れる。 しかも、俺が休むときもフォローしてくれたり、たまにお菓子もくれる、本当にいい先生。 優しくされる度に俺はこの人がこの学校にいてくれて良かったといつも感謝していた。 鈴木と祓川、そして日比野先生がいなかったら、学校がもっと苦痛だったと思う。 「あ、そうそう。それとこれ」 思い出したように日比野先生が俺にノート一冊ぐらいの厚みのあるプリントを俺に手渡す。 「赤井の我が儘で学校に来れなかった時の授業分のプリントだよ。これさえやっとけば英語のテストは心配ないから」 「うわぁ、えっ、これいいんですか？」 「ちなみに10枚やって持ってくれば一回分の授業を参加したことにしてあげるから」 「うわっうわっ、本当にありがとうございます！　すっごい助かります！」 素直に嬉しくてプリントを大切に抱えながら日比野先生にお礼を言う。 やったこれで一番の問題だった出席日数の問題が解決する…！ 「いいよいいよ。あ、他の教科の先生にも声かけといたから、留年にはきっとならないから安心してね」 「先生、神ですか…」 泣きそうになるほど感謝する俺に日比野先生も笑顔になりながら、そして別のプリントを手に取る。 「で、これが数学Ⅰでこっちが歴史に地理に化学に生物、国語に・・・あ、もう一つの数学だね。はいっとりあえずメイン教科。それから保健体育に…」 「あ、ありがとうございます」 今日教科書たくさん持ち帰るつもりで詰め込んだから…、リュックに全部はいるかなぁ。 受け取ったプリントを見ながら思っていると、日比野先生も俺の様子に気づいてハッとした表情を作る。 「あっ、ごめん。こんないっぺんに渡しちゃったら持ち帰るの大変か」 「い、いえっ大丈夫です。家そんな遠くないですし」 「手に抱えて帰らせるのもなぁ、何か袋持ってくるから待ってて。確か資料室に使ってない袋がたくさんあるから…」 ここは第一校舎の一階だ。 プリントを作ってもらった上に、隣の校舎の三階まで先生を歩かせるなんて申し訳ない。 それに先生にとって放課後の時間は明日の準備とかで忙しいはずだし、しかもサッカー部の副顧問までしている。 きっと部活中の鈴木が先生まだかなぁと思っているに違いない。 「ほんとに大丈夫ですよ。多分まだ入りますから。それに先生部活に行きたいですよね」 「あいつら俺が遅いとすぐいじってくるからなあ。ほんとに大丈夫？」 「俺そんなか弱くないですよ。こう見えて筋肉もちゃんとついてます！」 「そこまで言うなら分かったよ。帰り気をつけて」 「はいっ、ありがとうございました！　それじゃ先生さようなら」 「うん。またね」 ＊　＊　＊　＊　＊ 回想終了。 俺はベッドからのろのろ下りて、パンパンになったリュックからプリントや教科書ノートを出してテーブルに広げる。 一応言っておくと、俺は勉強は好きではない。 どちらかと言えば…、いや、はっきり言って嫌いだ。 学校は嫌いじゃないし、勉強も苦手ではないし、分からない問題が解けた時は嬉しい気持ちにもなるけど…、別に楽しくはない。 「うぅー…」 やりたくないと言う感情から勉強の必要性に対する疑問が湧きあがりつつ、それでも俺は出席日数を稼ぐためにも、このプリントたちを埋めねばならない。 「……よしっ」 覚悟を決め、まずは祓川が貸してくれたノートをめくる。 今までも何回かノートを借りたけど、祓川のノートはいつも見やすくて教科書以上にわかりやすい。 勉強の教え方もうまいから、学校の先生になれそうってよく思う。 祓川のノートを書き写し、次に先生からもらったプリントを手に取る。 １時間で10枚のプリントを終わらせた俺は思ったより時間がかかることに気づいてしまい、まだまだ山になっているプリントを見て深いため息が出た。 「なんで祓川と同じ答えにならないんだぁー。…、んんー？」 「……」 「ど、おー、してぇ〜、なー、のぉ〜」 「……」 「ッ！　お、お帰りなさいッ」 どこが間違ってるか分からない問題に直面した俺は、歌いながら祓川にヘルプメールを送ろうと携帯に手を伸ばした時、赤井くんがいることに気づいて、見られても困るものでもないのに慌てて乱雑に広げていたノートやプリントを一つにまとめる。 赤井くんは数秒俺を見てから無言でお風呂場へと向かった。 赤井くんが帰って来たことに気づかないなんて…。 思いの外集中していたらしい俺は、今何時だろうと携帯を見るとちょうど日付が変わったところだった。 携帯をテーブルの上に置いて、俺は両手を組んで前へ伸ばす。 「ん～～～っ、…ふぅ」 お風呂場からシャワーの音が聞こえてくる。 俺は何かし忘れてる事はないだろうかと考えを巡らせる。 そういえば夜ご飯について、今日は何も言われてない。 急なバイトでこんな遅くまで帰ってこなかったんだから、もしかしたら忙しくて食べてないかもしれない。 冷蔵庫を睨みながら色々考えた結果、俺は冷やし中華を作ることにした。 赤井くん、よく麺類買って食べてるから麺好きなんだと思うし。 お鍋に水を入れて火にかける。 そう言えば、あの日も冷やし中華だったなぁと、冷蔵庫から麺を取り出す俺は、とある日の忘れられない赤井くんエピソードを思い出した。 学校帰り、近所の猫と遊んでいたら妙に懐かれてしまい、俺のアパートまでついて来た事がある。 隙をついて中に入られてしまい、外に出そうと格闘している最中に赤井くんが帰って来た。 猫は俺から逃げて赤井くんの足に頬ずりし始め、赤井くんが蹴るんじゃないかってヒヤヒヤしたけど、赤井くんは猫に対して何も反応せず、いつものようにシャワーを浴びてベッドでくつろぎ始めた。 邪険にされなかった猫は赤井くんの膝の上に我が物顔で乗ったり、甘えるように前足で太ももをモミモミし出す始末で、お、お前、そのお方がどなたか分かっているのか…なんてドキドキしながら見てたけど、赤井くんは相変わらず無反応でスマホを見ていた。 油断してる今が捕まえて外に出すチャンスではあったけど、赤井くんの上に乗ってる猫を捕まえると言うことは、赤井くんの至近距離に近づかないといけない。 あの頃は今以上に自分から赤井くんには近づけなくて、結局俺は猫を追い出すことができなかった。 諦めて夕飯の準備を始めて数分後、赤井くん外に出してくれないかなぁと思いながらふとベッドを見た時、…なんと、あの赤井くんが寝てる猫の尻尾掴んだり離したりして遊んでいた。 猫も尻尾を動かして、はいはい遊んであげますよ、みたいな態度。 これが尊いという感情なのか…と、はっきり分かる空間が出来上がっていた。 あの日作っていた料理は、今日と同じ冷やし中華。 気まぐれなその生き物は急に外に出たがり、結局赤井くんが玄関のドアを開けて外に出した。 その後は二人でいつも通り夕飯にありついたけど、あの時は猫と戯れる赤井くんに気を取られて麺を茹で過ぎてしまい、一口目で赤井くんの眉間にシワが寄ったことを俺は忘れない。 「よし、できたっ」 冷やし中華を冷蔵庫にしまった時、ジャージ姿で赤井くんがお風呂から戻ってくる。 体が温まった赤井くんが、紅潮する頬に張り付く髪を雑にかき上げる。 水も滴るいい男という言葉はこの人のためにあるんじゃないかと本気で思うぐらい、お風呂上がりの赤井くんの色気には何度見ても惚れてしまう。 俺の視線に気付いた赤井くんがこっちを見たので、俺は慌てて視線をそらした。 「あ、赤井くん。一応冷やし中華あるので…、その、お腹減ってたら…食べていいから」 何も言わない赤井くんに、俺はもう一度赤井くんを見る。 感情を感じさせない静かな表情は怒っているように見えなくもないけど、その顔が赤井くんの普通の顔だってことはだいぶ分かってきた。 だから怖がる必要はない。 怖くないけど…、でもその無言は怖い。 もしかして今日は冷やし中華の気分じゃなかったのだろうか。 それともご飯食べてきたからいらないとか。 気分じゃなかったらすぐ作り直すし食べてきたならそれはそれでいいけど、あまりの長い沈黙に俺は徐々に床に視線を落として行く。 何か不快な事をしただろうかと不安が膨らんでいき、癖ついた謝罪の言葉を出しそうになったところで赤井くんが口を開いた。 「お前さ…」 その先の言葉を言わない赤井くんに、俺は恐る恐る顔を上げる。 すると、何か言おうとした赤井くんの視線が一瞬教科書やノートの置かれたテーブルへと移動する。 そして「なんでもねぇ」と一言呟いて、赤井くんは俺に背を向けてベッドに寝る。 会話は終わり。 赤井くんの態度は見るからにそういう事なんだろうけど、あんな途中で話をやめられると気になってしょうがない。 赤井くんは何を言おうとしたのだろうか。 やっぱり俺が気に触る事をして、とうとう怒りを通り越して呆れられたのだろうか。 原因を想像すればするほど、悪い方に考えてしまう。 こういう時は気持ちを切り替えるためにいつもこう考える。 でも、まだ赤井くんは俺の部屋にいる。 別れるって言われてない。 それだけで、少しだけ安心を得られた。 勉強道具たちをカバンに詰め込んで、赤井くんの睡眠の質を下げないよう俺は電気を消す。 俺は赤井くんの寝るベッドの隣で自分の膝を抱えながら目を閉じ、未だに先生に提出していない進路調査用紙を思い出す。 俺の未来は白紙だった。 俺は赤井くんのものだから、自分で書けない。 赤井くんに聞いてみればいいのかもしれない。 でも、もし赤井くんが答えなかったら、…俺をいずれ捨てるつもりだとしたら、そう思うと怖くて聞けない。 赤井くんの言葉は絶対だから、別れを告げられたら俺は彼と別れないといけない。 捨てられる日が来た時、付き合ってくれてありがとうございましたって言って、ちゃんと別れられる心の準備がまだできていない。 すがりついたりしないで、ちゃんと赤井くんの言うことを聞いて、いい思い出に…。 「おい」 考えながら寝かけていた俺は、赤井くんの声で目が覚めた。 気づいたら水の入ったコップを手に持っている赤井くんが俺を見下ろしている。 水飲みたくて起きたのかなと思いながら、覚醒しきれていないぼんやりした状態で赤井くんを見ていると、赤井くんが俺の腕を掴んだ。 強引に腕を引っ張られてベッドに座った赤井くんに乗り上げてしまい、俺はお慌てて体を離す。 「ご、ごめっ、…わっ、んんっ！」 顎をとられてそのまま口を塞がれる。 そのままベッドに押し倒されたと思ったら、赤井くんの舌が俺の唇を割って口の中に入って来た。 あ、赤井くんから、うそっうそっ。 何度しても慣れないそのぬるりとした感触に、恥ずかしくてギュッと目をつぶりながら赤井くんの少し冷たい舌を受け入れると、水が口内に流れてきた。 「ふっ、んむっん…！　…んく…ん、はっ」 不意打ちで流れ込んできた水を口のはしから零しながら、俺は何とか数回に分けて飲むけど、赤井くんから深いキスがまだ止まらない。 単なる水なのに、赤井くんが一度含んだ水が今俺の胃に入ったと思うと、未経験だけど赤井くんの精液を飲んだような気持ちになり、濃厚なキスと空っぽの胃の中に入った少量の水が俺の体の熱をじんわりと上げていく。 赤井くんからキスしてくれるなんて、滅多にない。 押し倒されて、キスをされて、…次にやることは決まってる。 嬉しい、恥ずかしい、期待してしまう。 赤井くんの体が離れ、俺はどきどきしながら少しだけ目を開く。 そして、赤井くんの手に持っているものに気づいて、思考が一瞬停止した。 それが何か理解した途端、体が怯え始める。 「ぁっ、あ、や…」 「……」 俺の心境に気づいているはずの赤井くんは、何も言わずに潤滑ゼリーの蓋を開ける。 「逃げんな」 「ごめんな…さ…、それッ、…ごめんなさい、ごめんなさいッ」 赤井くんの持っているそれは、使い方を知らなければただの棒。 使い方を知ってる人にとっては、気持ちのいい棒なのかもしれない。 だけど、過去にきつい思いをした俺にとってそれは地獄の棒だった。 「それ、本当に嫌で…、ぁ、お願…、ッ」 ギュッと性器を強く握られ、俺は言葉を続けることが出来なくなった。 他のことならなんでもするからと思うけど、赤井くんは俺の完全に萎えてる先っぽにそれの先端を宛がう。 「うぅ、ひっ、ぅ…っ」 「…まだ、入れてねえだろ」 「だって、それ、ほんと痛いから…」 べそべそと涙目になる俺に呆れる赤井くん。 赤井くんが俺の性器に入れようとしているのは、尿道プラグや尿道ブジーと呼ばれる代物だった。 前に赤井くんに使ってみろって言われて使った時は痛すぎて死にかけたし、しかも数日は歩くだけでも痛かった。トイレなんてまさに地獄。 赤井くんに見られながらだったから、痛いの我慢して無理やり入れた自分のせいなのは分かってる。 こういう商品が売ってるだけあって、上手くやれば尿道も気持ちいんだろうけど、あの時の痛みを思うと…本当にやりたくない。殴られた方がマシだ。 ましてや今日は赤井くんが入れようとしてる。 自分のタイミングでゆっくり入れると言う安全行為ができない。 しかも前より長いし、なんかビーズが連なっててボコボコしてるし…。 怖がる俺を無視して、一番端のビーズをくぷっと中に入れた赤井くんに「やっ」と小さく悲鳴をあげて俺は赤井くんの手を掴む。 でもこんな抵抗、意味はない。 赤井くんが「…手」と一言呟く。 そう言われてしまえば、俺は赤井くんから手を離すしかなかった。 無駄な抵抗が止まった俺に、赤井くんがゆっくりとビーズを入れ進めて行く。 「っ、ぅっ、んぅッ…！」 ズブズブとゆっくり中を擦られる刺激に体を震わせ、俺は目をつぶりながらシーツを握りしめる。 あの痛みに耐えなきゃと思っていた俺は案外痛くないことに気づいて、ゆっくり目を開ける。 太さも前の物とさほど変わらないと思っていたけど、前より細いのかもしれない。 結構入ったと思ったそれはよく見ればまだ半分も入ってなくて、赤井くんが潤滑ゼリーを足して残りを入れていく。 緊張と視覚的刺激で息が上がってくる。 まだ入れるの？まだ入れるの？とそれに目が離せない俺は、ある一点を超えた瞬間に腰に快感が走った。 「ッ、ぅんッ！」 今の、前立腺だ。 こっちからも触れるんだと気づいた俺は、もう嫌な気しかしない。 お尻だけで簡単にイケるようになっただけでも困ってるのに。 「あっ、待ってッ、んんっ」 「痛くないだろ」 「あっ、ああッ！　待っ、ッ…あ、あっ」 短く抜き差しされ、前立腺を直接こすられる快感に足が震える。 快感が走る中で尿道をビーズが出て行く時、射精する感覚に全身に力が入る。 赤井くんが…俺を気持ちよくしてくれてる。 その事実が何よりも興奮する。 赤井くんの綺麗な顔を見ながら全身を駆け上がっていく快感に、なぜか涙が出てくる。 ふと赤井くん視線が俺とぶつかり、その瞬間頭が痺れて真っ白になった。 「あッ…ッ…あッ、イってるッ、これッい、ぐッ、ぅ、〜〜ッぁあ！」 強制的にイかされ、ビーズの間を通って精液がドプドプと糸を引きながら溢れ出る。 「あぅ…、あっあっ、ぁ、ッ、ふ、んんッ」 「……」 「ふっ、ッ、ぅ、……、ひッ」 「逃げんなって…」 「ぅううっ、んんッ！　あぅ、ぅ、あ、あっあっやッ」 イって敏感な状態でも中をこする動きを止めてくれない。 首を横に振りながら動きを止めようと伸ばした俺の腕は赤井くんに掴まれた。 棒の先端を一番気持ちいところを小刻みに揺さぶられながら、カリから先端を指でにゅるにゅるとこすられ、お腹の奥底から駆け上がってきたさっきよりも強い快感の波に俺は夜中だってことも忘れて悲鳴に近い声を上げた。 「ぁああっ待ってそれッ！　やばいやばっ…いの、くッ、ぃ、〜〜〜〜ッぅう゛んんンッ！」 赤井くんは動かす手を止めてくれなくて、全身を強い快感が走り、俺は両足をびくんっ！と大きく跳ねさせながらイった。 「はひっ、ひ、ぃ…っん、も…もおっ…ゃ、あっ、あっあっ」 「後ろ寂しいだろ」 「っう、あっ、やら、寂しくないッ寂しくなッ、やっ、ッああ！？」 「声抑えろよ」 「ぅ、ごめっなさ…ひっ、うぅ…ぁっあっひッ！？」 お尻に入ってきた指が小刻みに揺れ、その振動が前立腺から尿道へ伝わる。 わけのわからない快感に赤井くんの体を足で挟みながら全身を震わせて何度目かの絶頂。 声なんて抑える余裕もなく、精液の出ないドライオーガズムを決める。 赤井くんは俺の体の震えの様子を見て、少し落ち着くとまたすぐに指が動かし始める。 それをされると俺はまたすぐにイってしまう。 「もっ、やッ！　あっ、あッ抜い…ッ、ぅ、ん、〜〜ッ！」 「どっちを」 「はっ、はぁっ、ま、まえっ、前抜いッ…て、ください…ッ」 前と後ろで前立腺を挟まれるのは何度もイってしまうほど気持ちいいけど、やっぱり怖かった。 泣きながら懇願すると、赤井くんの手の動きが止まった。 お尻から指が抜かれ、精液まみれのビーズがイって敏感な中をこすりながらゆっくりと抜かれていく。 それがまたひどく気持ちよくて、近くにあった枕にすがりつきながら俺はひいひいと情けない声を上げた。 刺激物を抜いてもらえて、やっとゆっくり呼吸ができた俺は大きく息を吸い、そして吸った空気を吐こうとした時、赤井くんが俺の腰を掴んだ。 そのまま赤井くんの熱く勃ち上がったモノをぬぶんっと挿入される。 指とは比べものにならないその質量と熱さに、散々今まで性器として扱われてきた俺のお尻が即快感でバカになった。 入れただけでイキそうになった状態で奥まで乱暴に突かれて本気で叫びそうになったけど、何とか枕で声を押し殺す。 何度も何度も腰を打ち付けられ、中をえぐられるようにかき回される。 奥を突かれる度に全身に耐え難い快感に襲われ、すぐにオーガズムにいたり、中イキで敏感になったまま突かれて５回も突かれれば次のオーガズムの波に襲われ、短時間で何度もイキ続ける体はずっと痙攣してて声なんか出す余裕もない。 枕に突っ伏しながら時々女子みたいな高い声の呻きを漏らし、呼吸もままならずに何度もイってると、赤井くんの動きが止まった。 「おい」 「っ、ッ…ッ！」 「イキ過ぎ」 「っひあ゛っ！？　ゃ…ッ、〜〜〜っッ！！」 気持いところをぐーっと押され、ビクンと大きく背中を反らし、またイった。 赤井くんの性器がゆっくりおなか側の腸壁をこすり、俺はぬぽんと出ていく刺激に声をあげ、もう一度肛門に先端を当てられただけでまた声をあげる。 さっきまでの動きと違って、今度は背中側の腸壁をゆっくりこすられる。 前立腺を外してるのに、抜かれる時の気持ち良さで全身が溶けそうになって、少しでも奥に来るとイキそうになって、乱暴に奥を突かれるのとはまた違う快感に足が震える。 すぐ敏感になる本来排出するだけのその場所には赤井くんも呆れてるだろうけど、俺も困ってる。 だって、こんな体、ほんとに頭おかしくなる。 でも、しょうがないんだ。 赤井くんが俺で勃ってくれるなんて、そんなの……おかしくなるに決まってる。 俺をイカせまくったそれが出てく刺激に全身が跳ねる。 なかなか入れ直してこない赤井くんに、俺はイきすぎてぐったりしたまま、視線だけ赤井くんに向ける。 赤井くんが何か持ってきた。 細長い棒状のもので、その持ち手にはボタンのようなものが…。 それが何か理解した俺は「やだ、やだ」としがみついていた枕を離して赤井くんに背を向ける。 四つん這いになって逃げようとする俺の脚を赤井くんが掴んで引き戻し、懲りずにまだ逃げようとする俺の敏感になりすぎてる前立腺を亀頭で押しつぶしながら赤井くんが一気に奥まで性器を入れてきて、俺はたぶん今日一番の悲鳴をあげた。 入れただけでイって動けなくなった俺の体を赤井くんが繋がったまま起こして、赤井くんの上に無理やり座らせられる。 深くまで届いた赤井くんのモノに一瞬声が出なくなるも、なんとか息を吐き出せた俺は終わらない快感にいやいやと泣きながら首を振る。 何度も「やだ、やだ」と声を出す俺に、赤井くんは俺の勃ちっぱなしの性器の先端に尿道バイブの先っぽを当てて、あろうことか俺にそのバイブを持たせる。 「自分で入れろよ」 「ひっ、や、…ごめんなさいッ」 「ごめんじゃなくて、入れろって言ってんだけど」 入れる以外の選択肢がない俺は、少しでも動くとお尻の刺激でイきそうになる体とまた始まるであろう尿道からの快感に、泣きながら言われた通りバイブを入れていく。 なるべく刺激しないようにゆっくり入れてるのに、奥に進めれば進めるほど腰から背中を伝って頭が真っ白になる快感に襲われて、その度に手が止まる。 泣くばっかりで手が進まなくなった俺を見かねて、赤井くんの手が俺の手に重なる。 「こうするだけだろ」 「っや、ぁああッ！　やめっ、ひっ…ッぃ」 「…手」 赤井くんの言葉に、俺は「ひぐっ、ぅ、うう…」と呻きながら、赤井くんの腕から手を離す。 ビーズが連なってできた最初の尿道プラグと比べると短いと感じたこのバイブ機能付きのブラグも前立腺まで届いてしまう長さはあって、赤井くんのモノとバイブの先端で挟まれただけで、快感で出来上がってる俺の体はビクンビクンと跳ね上がる。 「ぅ…、ぅううッ、ひっく、…ひっ」 「スイッチ入れな」 「ゃ、ぁ…、……ッ」 「こういう時、お前ほんとトロい」 「ぁあ！？　ひ、ぎッ、ぅあっぁあああッ！？」 とろいも何もスイッチを押したくないという意思表示なのだが、赤井くんは無情にも最初から最大の振動でバイブを起動させた。 人の手ではできない細かく激しい振動で直接前立腺を揺さぶられる。 その刺激はひどいもので、俺はと言うとマジで叫びながらイきっぱなしになった。 バイブを止めない限りずっと絶頂するこの状態に、本当に無理だと思ってバイブを抜こうとした両手は赤井くんに掴まれ、動き始めた腰に俺の体が仰け反る。 前と後ろから挟まれるように前立腺を責められて、快感から逃げる体は引き戻されるついでに奥の一番気持ちいところまで一気に貫かれる。 「全然俺の言うこと聞かねえな」 「はひっ、ひっあ！　イッ〜〜ッ！！」 「聞いてんのか」 「ぁああ！？　ぁあああッ！」 お腹を押されながら、S状結腸に無理やり亀頭をぐりぐりと押し込められ、視界が白く飛ぶ。 一瞬全身から力が抜けて気絶しかけるも、前立腺をバイブに直接揺さぶられる快感に叩き起こされ、叫びながら現実に戻される。 気絶しかけては暴力的な快感に叩き起こされ、また気絶しそうになる…を繰り返しながらずっとドライし続けたその果てに、俺はもう一度射精してから潮まで吹いていたらしい。 らしい、というのは、俺自身は出した事を覚えてなかった。 赤井くんが中で果てたことすら分からずに、気づいたら異常に濡れているベッドの上に横たわっていた。 中イキ痙攣イキを繰り返した体の負担は大きく、叫びすぎた代償の痛みを喉に感じながら俺は顔を傾けて赤井くんを探す。 外はまだ暗い。 暗闇の中、キッチンの方で水を飲む赤井くんがかすかに見える。 水で濡れた口元を拭った赤井くんが、コップを持ってこっちにくる。 水を口に含み、赤井くんが俺にキスをする。 キスというよりは、単なる水分補給だ。 最初と同じく口移しで水を飲まされ、叫んで乾ききった喉が潤い、火照った体を流れる冷たい水が気持ちいい。 赤井くんとのセックスは辛い時もあるけど、好きだった。 セックスの時と暴力の時は、俺から赤井くんに触れられる時間。 何より、赤井くんが俺を見てたくさん触ってくれる時間。 赤井くんと恋人になった実感が一番感じられる時間。 重たい瞼に逆らえずに閉じていくと、冷蔵庫が開く音が聞こえた気がした。 ＊　＊　＊　＊　＊ アラームの音で目を覚ますと、部屋が明るくなっていた。 重たい体を起こし、目をこすりながら周りを見る。 赤井くんは…、いない。 少しぼーっとしてから、俺はすぐにキッチンへと向かった。 俺は冷蔵庫の中を確認する。 昨日作って入れといた冷やし中華が無くなっている。 他に何か昨日と違いがないか確認して行くと、ふとテーブルに先生からもらった数学のプリントが置いてあった。 しまい忘れただろうかと不思議に思いながらそれを手に取る。 そのプリントは俺に歌を歌わせたあの問題の載ってるプリントで、なんでこの答えになるのか祓川に聞きたかった事を思い出したその時、自分が書いた答えに見覚えのない矢印のマークが書かれていることに気づいた。 自分が書いた覚えはない。 そうなると書いた犯人は一人しかいない。 気づいた瞬間、お腹の奥がきゅーんと疼き鳴いた。 俺が作ったものを、赤井くんが食べてくれた。 俺のものに、赤井くんが興味を示してくれた。 俺という存在が、赤井くんの生活の一部になっている。 そんな現実に、幸福すぎて胸が苦しい。 分からないところあったら赤井くんに聞いてみようかな。なんてことまで思ってしまうぐらい幸福で心が前向きになる。 まあ、思うだけで、実際にはできないんだけど…。 赤井くんの気まぐれに一喜一憂する俺は、あちこち痛い体を伸ばしながらお風呂場へ向かった。