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夕飯での出来事 1
気づいた時には、部屋に寝かされていた。
身体が綺麗にされていることから、あの後、兄が身体を洗ってくれたのだろうと思うと、申し訳なさと乱れた自分を思い出して、顔を赤くしていた。
「──今度は何を想像しているの」
肩が異様に上がってしまう程、驚いた。
声がした方へ視線を向けると、正座をしていた兄が優しい笑みをして、こちらを見下ろしていた。
いたことを全く気づかなくて、またさっきのことを思い出して、目線を逸らしてしまう。
だが、それを逃してくれなく、顔に手を添えられ、無理やり向かされる。
「もしかして、さっきのお風呂のことを思い出していたの。ふふっ。あの時の葵の乱れっぷりはあまりにも可愛かったな·····」
「恥ずかしいから、言わないで!」
「そうやって、顔を赤くするのも可愛いよ」
頬を撫でられる。
兄は上機嫌なようだ。鼻歌混じりに、「可愛い、可愛い」と言って、しきりに撫でてくるのだから。
あのことを言うだけでこんなにも機嫌が良くなってしまうだなんて。
これから兄の良いところを口に出して言ってみようかな。
そんなことを思っていると、「いつまでもこうしている場合じゃないね。夕飯を食べよう」と言って、立ち上がった。
その動作につられて起き上がる時、手が前にされていたことに気づき、目線を下げる。
両手を短く繋がれ、さらにその間をまた短い縄が腰辺りに巻かれていた縄に繋がれ、それを辿っていくと、後ろの柱に括り付けられていたことが分かった。
やっぱり、この部屋から出られないんだと少し悲しそうな表情はするものの、中には入っているものの、兄がいない間にスイッチを入れられる後ろのモノからの責めもなく、手を前にしているお陰か、幾分前よりは楽なように感じられた。
前に目線を戻すと、人一人分離れたところに正座をして、こちらを見つめる兄と、下男が学校行事の旅行先の旅館で見たことがあるような、お膳を葵人の前に置いて、そそくさと出ていく。
お膳の上には、ほかほかのご飯と煮魚と味噌汁と漬物が乗せられていた。
いい匂いがしてきたのもあってか、お腹がぐぅと鳴り、慌てて押さえる。
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