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窓の外から 3
「ん、そう」
このお婆さんに罪はないだろうと、半ば素っ気ない態度で返事をするという、中途半端な不良をやってる。
そうだ。不良になりきれてないから、いや、家のことの方が大きいかもしれないが、学校も厳しい罰をしようとしないのか。
とはいえ、やってきたことといえば、今もやってる授業をサボる程度で窓を割ったことすらないし、バイクを盗んで走り出したこともない。
もし、自分が割った際に無関係な人に怪我をさせたら、そっちの方が大変だし、免許持ってないし、どう運転すればいいのか分からないし。
·····なんで、不良をやっているんだっけ。
自分で何がしたいんだが分からなくなる。
思考に耽りながらも、お婆さんの、「こんな時間に行くの。いいわね。でもね、学校に行けること自体が幸せなのよ。私が学生の頃はね──」と、何度も聞かされた話を適当に相槌を打ちながら、足早と去ろうとしていた。
ひらり。
目先に落ちてきた、薄ピンク色の花びらを無意識に目で追う。
「あらあら、桜屋敷さんの家の桜が今年も見事に咲いているわね」
「さくらやしき?」
真上を見上げているお婆さんの方を思わず振り向いてしまった。
「あら、碧衣ちゃん、知らないの? 西は西野寺、東は桜屋敷と言われるぐらい有名な家柄なのに。貴方の家と同じぐらい大きくて立派なお屋敷よ。そうして、名前にもある樹齢何百年そうな立派な桜の木が毎年咲いて、私これを毎年見るのが楽しみなのよ〜」
「ふぅん·····」
前に親がそんな話をしていた気がするが、やはりそういうことも興味が無く、全く頭には無かった。
「まあまあ、いつ見ても綺麗ね」と感嘆の声を上げるお婆さんを尻目に同じように見上げてみる。
よく見かける色合いの桜が視界いっぱいに咲き乱れていた。
どこまでも広がる、桜。ずっと見ていると、それが空のように見え、たしかに思わず見てしまうほど見事なものであった。
どこにでもあるような桜にどことなく既視感を覚える。
同じような景色を今のように同じように見上げていたような気がする。
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