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窓の外から 4

あ、そうだ。 自分の家の庭にもこのぐらい立派な桜の木があった。 小さい頃、毎年のようにその下で両親と共に花見をしていた。 いつの頃からかしなくなったな。咲いているうちにまた共に花見をしてみるのもいいかもしれない。 穏やかな気持ちになり、そんな考えに至る。 と、「碧衣ちゃん! ここも見るのも素敵なのよ」とワイシャツを引っ張られる。 無理やり現実に引き戻され、面倒くさそうにお婆さんが言っている方を見やる。 簡単には登ることすら困難な白い塀の壁に、桜の形にくり抜かれた部分があった。 「桜·····」 「そう! ここもね、素敵なのよ! なんてセンスの良いお家なのでしょうね! 一度でもいいから住んでみたいわ〜」 うっとりとするような口調で言うお婆さんを右から左へ聞き流し、じっくりと見る。 と、見るつもりは無かったが、この塀の中が見えた。 何かの葉っぱで生い茂っていて視界は悪いが、かなり広そうな庭とその先に丸い窓が見えた。 ──と、そこに二人の男子が立っているのが見えた。 片方は碧衣と同じ制服の学校を着、もう片方は白い浴衣を着ていた。 どちらも同年代に見えるが、とっくに学校が始まっている時間帯に何をしているのだろうか。 揉めている最中だったらしい。が、何故か浴衣の男が両手を後ろにされたかと思うと、宙吊りにされているのが辛うじて見えた。 どういう状況なんだ。 わけが分からなく、食い入るように見続けていると、次は片足だけ吊られているらしく、その拍子に裾が捲れる。 遠くて見えないが、Tバックに見える黒い下着のようなものが見えた。 丸見えじゃないか。 どうしてそんなことを、と思った直後。 ぎこちない動きをしていた。 無理な体勢をしているというのに、何をしているのだろうか。 だが、その動きが妙に艶かしい。 表情もそうだ。苦悶な表情をしつつも、どこかうっすらと赤らめ、恥じているように見えるが、それが返って欲情させる。 途端、下腹部に反応があるのを感じ、ハッとする。 今、自分は何を考えていた? 「碧衣ちゃん? どうしたの。どこか具合でも悪いの?」 こちらを心配そうに見上げてくるお婆さんからの視線から逃れるように、咄嗟に走り出してしまった。 「碧衣ちゃん!?」 遠くでお婆さんの叫び声が聞こえてくるが、走る足は止まらなかった。

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