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出会ってしまった 2

学校を、辞めた? 何の為に。 「は? あ、それで思い出したが、そいつって、テストでよく一位になってたヤツ? 普段は目立たないが」 「そうそう! 女子がよく『見た目は可愛いし、声がおっとりしていて、しかも、優しいの! 癒されるし、お兄さんの方は顔が良すぎて眩しくて、直視出来ないぐらいのイケメンで、二人のギャップがあっていいのよね〜』と言ってたやつ」 なよなよとした仕草を交えて、裏声で桜屋敷のことを言っていた。 昨日見た二人は兄弟だったのか。その兄弟が窓際で一体何を。どうして学校を辞めたのか。 「あ、桜屋敷先輩が来たよっ」 友人である石谷が碧衣が思っていたことを口に出そうとした時、一人の女子が声を上げたことにより、クラスの女子全員がそれぞれ黄色い声を上げて、廊下の方へと繰り出す。 廊下のドアや窓に女子達が群がっていて見えにくいが、辛うじて見えたのは。 垂れ目気味の目に、形の整った薄い唇は微笑を浮かべているためか、優しい雰囲気を纏わせ、一見すると誰もが好印象を持たせる人物。 だが、碧衣はその弟と揉めている最中に背筋が凍る出来事があった。 不意に頭では昨日のことを思い出し、目線はその何人かの女子に囲われているらしい男子を向けているからか、刹那ほどの一瞬、目が合ってしまった。 ゾッ。 瞬きぐらいの一瞬。これだ。またこれを見てしまうとは。 昨日もそうだ。距離や生い茂っているからいるかどうかなんて分かりそうにはなさそうだったのに、いるのが分かっているようで、あの時も目が合った。 「あー、桜屋敷先輩の顔が拝めるだけでも最高の一日になりそう!」 「だねー! でも、弟の桜屋敷君もずっと拝みたかったな〜」 「それは言えてる! なんで学校辞めちゃったんだろう·····」 桜屋敷先輩が姿が消えた途端、見ていた女子二人が通りすがりに会話しているのをどこか上の空で聞いていた。 急に辞めたようで、クラスの人達もそれに違和感を覚えている。 あの家で何が起きているんだ。 人に対しても興味が無いはずなのに、昨日の非常的なものを見てしまって、気になってきてしまった。 頭が混乱している碧衣に、友人二人が呼びかけているのを気づかずにいたのであった。

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