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出会いたくなかった 2
それを聞いた兄は心底嬉しそうな顔をし、「分かった。でも、お風呂に入るまで楽しみにしてて」と頭を撫でて、部屋を出て行った。
そうして、再び戻って来た兄の手からご飯を食べ、学校に戻っていったらしい兄がいなくなった部屋の中、特にやることも無い葵は、先ほどの同級生のことを思い浮かべ、羞恥で顔を赤くした。
敷地内に入ってくるまで予想していたかは定かではないが、葵が外に出たくなくなるきっかけを作ったのはたしかだった。
あんな姿を見られたのでは、学校に行くのが嫌になる。
そうでもなくても、学校に行くのは無理そうだが。
「·····こんなになるのなら、西野寺君と話してみたかったかも」
西野寺家もこの桜屋敷家と同じぐらい大きくて立派な屋敷を構えている。
この地に住み着いた時に農家として始め、それから大きくなり、名の知れた家柄になったと父から聞かされたことがあった。
そんな家柄の一人息子の西野寺碧衣は、何かしらの理由で髪を染め、不良になったと中学校が同じだった同級生が言っていた。
規則の厳しい進学校であるうちの学校だが、そんな家柄であるため、先生方も言うに言えないのかもしれない。もあるかもしれないが、ただ見た目が悪そうに見えるだけでそれ以上のことはしてないようなので、大目に見ているようだった。
見た目のこともあり、怖く、いつも遠目で見ていたが、先ほどの感じはきっと根は悪い人ではないような気がした。
兄と同じ漢字を使っていたから、下の名前まで覚えていた同級生。
「·····また、会えるかな·····」
こんなので会えるわけがないかと、自分で言ったことに自嘲し、目を閉じた。
これから来る激しい責めに、心を押し殺す準備をするために。
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