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会ってみよう 3

「やっぱり、おかしいよね。本来ならば女性にしかないものだから。けど、これで兄さんが言っていたことを信じられずにはいられなくなったんだ。もう、受け入れるしかないって」 碧衣の視線から逃れるように、俯いた桜屋敷のことを見つめながらも、今言ったことを頭の中で、どうにか理解しようとしていた。 いや、やっぱり無理そうだった。あまりにも非現実すぎて頭が追いつかない。 「·····お前は、本当に、それでいいのか」 「いいわけがないけど·····もう、逃げられないんだ。兄さんがいる限り、この柱に繋がれている限り」 「そのお兄さんがいなくなれば、柱に繋がれていなければ、お前は自由になるわけ?」 「兄さんがいなくなる·····? 兄さんがいなくなるなんてそんなの、嫌だ·····っ!」 「っ!」 怒声にも似た声で叫ぶ、勢いよく顔を上げた桜屋敷にギョッとした。 あの時とは違い、真正面で言われたのもあるが、本気で怒っているようだったからだ。 目に涙を浮かべて眉を吊り上げている桜屋敷に、すっかり萎縮をした碧衣は、「ご、ごめん」と即座に謝る。 そのことでハッとした桜屋敷は、また困ったような顔を浮かべて、「僕の方こそごめんね。急に怒ちゃって·····」と言う。 「僕、昔から兄さんのことが大好きだったんだ。誰よりも優しくて、陽だまりのような満面の笑みを見せながら、頭を撫でてくれるんだ。どこへ行くのも後ろについて行く僕のことを嫌な顔一つも見せなくて、転んだら危ないからって、手を繋いでくれて。そんな兄のことが大好きだった。本当に、大好きだった·····」 「桜屋敷··········」 「急に態度が変わって、ちょっとでも兄さんの機嫌が損ねることがあると、こうやって身体中に縄の痕がくっきりと残るぐらいお遊びという名のお仕置きをされたりするけど·····時おり見せる、昔からの兄さんの優しさに触れると、兄さんの大好きだった頃のことが忘れられなくて、いなくなることが信じられなくて·····だから、カッとなって声を上げちゃった」 本当にごめんね、と力なく笑う桜屋敷。 ズキ。 さっきから感じる、胸の痛みが痛くて仕方ない。 こんなにも桜屋敷にとっては不条理なことなのに、それでも、心のどこかでまだ兄のことを信じているところが、どうにもならなくてイライラして髪をむしってしまうほどだった。 何か無いのだろうか。 他人様の家の事情に首を突っ込むのはおかしな話だが、ここまで来れば無関係ではいられない。無視をするわけにはいかなくなった。

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