すっかり夏になった。 クラスの皆は、夏休みはどこに行こうかとワイワイ盛り上がっていた。 碧衣といつもつるんでいる友人らもそうである。 「なっなあ！ 俺らもどこかに行かね？」 「はぁ？ 碧衣ちゃんはともかく、なんでむさ苦しい男共で行かないと行けねーんだよ」 「なんで、俺はともかくなんだし」 「ちげーよっ。夏祭りに行って、女の子をナンパしてキャッキャするんだよ！ 祭りの勢いで誘ってくれる可愛い子一人ぐらいはいるだろーよ」 「俺の話、聞いてる？」 「んー··········。なきしもあらず、だな。よっし！ そうしてみっか！ 碧衣ちゃんも行こうぜ！」 「あ？ あぁ、まあ、いいけどよ·····」 「よし、決まりな！」 ニカッと笑う友人に半ばもうどうでもいいやと思えた碧衣は曖昧な返事をし、そのまま話を続ける友人を頬杖ついて聞いていた。 夏祭り、か。だいぶ昔に親と一緒に行ったぐらいで行ってはいなかった。 久しぶりに行っても相変わらずの屋台の並びなんだろうと思いつつも、桜屋敷は何を食べるだろうと、不意に思った。 夏祭りというのだから、当然夜遅くまでいるのだろう。桜屋敷の所へ行けるのは最低でもその次の日。だったら、たこ焼きや焼きそば、かき氷とかは持っていくのは無理そうだ。 だとしたら。 「おっ？ 碧衣ちゃん、ニヤついてどうしたんだよ？ 碧衣ちゃんも楽しくて仕方ないのか？」 「んあ？ んまあ、そうだな·····」 「よっしゃあ！ 可愛い女の子を見て楽しもうぜ！」 「わっ！」 そう言いながら、肩を組んでくる。 急にやり出すものだから心臓が飛び出るぐらい驚いたが、石谷も一緒にやり出してくるものだから、全く·····と、呆れる。 だが、心底呆れているわけでもなくて、指摘されて気づいた笑みを浮かべていることに自分で自分を笑いながら、「いぇいいぇい！」とはしゃぐ友人らにつられても笑うのだった。――