35 / 95

夏の暑さより·····。 3

「はーーーー····················。マジ、無いわ··········」 「俺なんか、さいっしょから期待はしてなかったぜ。無理なんだって。俺達は魅力がないんだわ。いいじゃん、俺らには可愛い碧衣ちゃんがいるんだから、ガマンしようぜ」 そう言って肩を組んでくる石谷に、「いや、だから、何で俺は可愛い女の子みたいな扱いされているわけ·····?」とその手を無理やり剥がそうとしながら、少々怒りを込めて訊ねる。 山中はリンゴ飴を齧りながら、「可愛いじゃん。名前が」と答える。 ガッ。 リンゴ飴ごと山中の顔を殴る。 突然の出来事に石谷は肩を組んだ姿勢のまま硬直し、山中に「大丈夫か·····?」と言われたことにより、一拍遅れて、さっさと歩く碧衣に、「ごめんよー!」と飛びつく。 「調子に乗りましたぁー! 碧衣様のお母様のお陰で、素敵な浴衣を着付けくださった上にそのまま頂いてもいいことに、テンション上がっていたんですうー! お許しをー!」 「·····くっつくな。気色悪い」 「ひんっ!」 山中の顔に力いっぱい手で押し退ける。なかなか剥がれない山中に苛立ちを覚えた碧衣は蹴り飛ばそうと足をあげた時、石谷が、「碧衣。止めてあげなよ」と窘める。 「コイツも調子乗って怒らせたところもあるから、コイツの方が悪いけどさ。さすがに可哀想だぞ」 「·····分かったよ」 手を退けた後、引っ付いていた山中は素直に剥がれ、窘めた石谷の後ろへと隠れる。 面倒くせぇと、ため息を吐いた後、「·····ごめん」とそっぽ向きながら謝る。 「あと、リンゴ飴弁償するから。それで許してくれないか」 それを聞いた途端、ぱあと目を輝かせ、うんうんと全力で頷いたのを機に犬のように再び碧衣の隣に来たことにより、「単純なヤツだな」と言った後、友人らを連れてリンゴ飴が売っている屋台に向かう。 そろそろ、桜屋敷のも買っておくか。 屋台に視線を巡らせて、一人悩む。 たこ焼き、水飴、焼きとうもろこし、じゃがバター、焼きそば、かき氷·····。 当たり前なのだが、その場ですぐ食べれる物ばかりで、最低限持って帰れそうで、次の日まで持ちそうな物がない。 いや、さっき山中が食べていたリンゴ飴があるじゃないか。 きっと喜んでくれる。 桜屋敷が美味しそうに食べているのを想像しながら、リンゴ飴が売っている屋台に差し掛かったのだが。

ともだちにシェアしよう!