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夏の暑さより·····。5

碧衣が見ていたそれは、綿あめだった。 これならば、桜屋敷も喜んでくれるに違いないと思っていたら、無意識に飛びつくほど奇怪な行動をしていたようだ。恥ずかしいこの上ない。 そんな碧衣のことをそこまで気にしてない様子の二人は、「この綿あめに入っている袋に描かれてるやつ、懐かしいなー! 今はこんなのやっているんだな!」と歓声を上げた。 子供向け用の綿あめの袋の絵柄には、フリフリのスカートと奇抜な髪型をした女の子達がピンクの袋に、いつもならば赤のポジションである立ち位置に、全体的に白いのを前に、後ろには左から黄色、赤、青、ピンクがバンザイのようなポーズを決めている青色の袋が並んでいた。 「もしかして、碧衣ちゃん。懐かしさでつい飛びついちゃった系男子?」 「はぁ? ちげーわ。てか、どんな男子だし、それ」 「碧衣ちゃんがたまたま見つけたお陰で、俺も何だか綿あめ食べたくなってきたな。買うか」 石谷が言ったのを皮切りに三人が三人それぞれ買って、石谷が食べ始め、山中はリンゴ飴をガリガリ食べた後、食べ始める。 その間、碧衣は大切そうに持ち、しきりに見たりはするものの食べようとしないのを、石谷は、「食わないのか?」と訊いてくる。 「ん? ·····んー·····今はいいかなって」 「じゃあ、俺に食わせてくれよ! まだまだ俺は食えるぜ!」 「お前の胃袋はピンクの悪魔かっ。山中にはあげねーよ」 「ちぇー、ドケチ」 言ってやがれ、と言い返そうとしたその時。 ヒュー·····パーンッ 空が突然明るくなったと同時に鳴り響く大きな音。 思わず一斉に見上げたものに、「花火だっ!」と山中が声を上げた。 「花火、か·····」 ふと、隣に浴衣を着る桜屋敷が見上げて、歓声を上げる幻聴が聞こえ始める。 『綺麗だね、西野寺君! 夜空に華やかに咲く、大きな花·····。どうしてこんなにも綺麗なんだろうね』 こちらに興奮気味で顔を赤く染めている桜屋敷と目が合った。 花火で照らされる桜屋敷がまた違ったように見えて、それが、花火なんかよりも一番··········。 「おー·····やっぱり、すげーよな、花火って。なっ、碧衣ちゃん。碧衣ちゃん?」 「え、何?」 「何って、碧衣ちゃん! 全くよー、どうしたんだよ。ぼうっとしまくっているじゃん! 夏バテ?」 さっきもそうだが、まさか桜屋敷のことで妄想して、逃避していただなんて言えず、「まあ、そうかもな」と曖昧に濁す。 「それこそ、マズイじゃん! もう家に帰ろうぜ。優も帰ろうぜ!」 「そうだな。これ以上、碧衣ちゃんが具合悪くなったら、タチが悪いしな」 二人が労るように背中を支えられながら、花火が打ち上げられる中帰って行く。 手にはしっかりと桜屋敷へのお土産を持って。

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