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夏の暑さより·····。 6

その次の日。早速碧衣は桜屋敷の家へと綿あめを持って入ろうとしたが、今は夏休みで学校が休みだから、あの兄も四六時中家にいる可能性があるのではないかと思い、行くに行けなかった。 とりあえずと、丸い窓がある方へ行き、中の様子を伺ってみたりはするものの、あの時のように窓際でないと中の様子が分からないため、全く意味が無かった。 だったら、あの窓まで行き、こっそりと覗いてみるかと、周りに人がいないのを念入りに確認した後、桜のかたどった穴に足をかけ、入っていく。 なるべく身を屈めて、足音を立てないようにゆっくりと時間をかけて足を進める。 この間の耳まで聞こえる心臓の音と、緊張なのか、暑さなのか、喉がカラカラで半分意識が無くなりかけていた。 必死に己を奮い立たせ、やっと辿り着いた窓を下からこっそりと覗く。 こちら側だと、柱のせいでいつも桜屋敷がいるところは見えづらく、角度を変えながら、姿を探す。 すると、いた。畳の上で何もせず正座をしている桜屋敷の姿を見つけた。 小さく声を上げた時。 障子が開いたのを見かけ、咄嗟に隠れる。 誰か来たのか見ずとも分かる。きっと兄の桜屋敷先輩だろう。 バレずに済んだものの、ここからでは全く声が聞こえないため、いつまでいるのか分からない。 このままでは本当に熱中症になって、死ぬ。 こんなところで倒れているのを見つけられたら、何もかもおしまいだ。 何か方法は無いかと、何となくポケットの中を探る。そして、固い感触が手に当たったのがきっかけで、これだと心の中で叫ぶ。 携帯端末。これをカメラモードに起動し、ギリギリレンズが出るぐらいまで窓から覗かせる。 うーん·····。いいアイディアかと思いきや、そうでもないな。 だが、見えづらくとも、少しでも二人が見えているのが映り、そのままじっとし続ける。 二人は話をしている様子だった。兄が桜屋敷の頭を撫でた後、顔を近づけて、額辺りに──。 また、今度こそは見てしまった。いや、まだハッキリとは見えてないし、直後に携帯端末を落としたから、見ていない。 ごちゃごちゃと理由を付けて、見たらしいことを全力で否定した。 またレンズ越しで中を覗くと、兄の姿は見当たらなかった。 今が、チャンスだ。 壁を伝って、唯一入れる障子に手をかけた。

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