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告白の秋 4
そう言いながらも楽しそうに笑う山中。
そんな山中に言われて、このモヤモヤしていた気持ちは"好き"ということを自覚させられた。
桜屋敷のことが、好き。
「あ! 見たか、優!」
「見たとも見たとも。あの碧衣ちゃんが赤くするなんてな。よっぽど桜屋敷のことが好きなんだな」
「ヒュー! ヒュー!」
「〜〜!」
顔がさっきよりも熱くなるのを感じる。この場合は照れているからではない。はやし立てる山中に対して怒っているからだ。
一言言ってやろうとした時、「ところでさ、」と山中が言った。
「桜屋敷の名前って何なの? 先輩とややこしいから、区別したいんだわ」
その一言に、一瞬にして火照りが冷める。
そういえば、名前を知らなかった。碧衣にとって桜屋敷は桜屋敷だったから、あの兄のことは頭には無かった。
「名前、知らないな」
「はぁ? マジ? とはいえ、それに関しては俺らも人のこと言えないが」
「なーんか、女子達が言っていたような気がするんだよね〜。あの兄と漢字は違うけど、読みが一緒とかどうのこうの。肝心の名前を忘れたな」
「名前が、同じ·····?」
「らしいぜ。兄弟で似たような名前にすることはあるが、名前が同じってのは聞いたことがないよな。ややこしいじゃん?」
「たしかに」
「名前が同じってなーんか、こう、以心伝心?」
「僕らはいつも以心伝心ってか? 違うだろ。こういう時は一心同体、運命共同体って言うんだよ·····なるほど、そういう意味か」
一人で何かに納得したらしい石谷に、「何が、そういう意味なんだよ〜」と山中が駄々っ子のように山中の腕辺りを掴んで揺らす。
しかしそれには無視して、改めて碧衣のことを見て、言った。
「産まれた時から、先輩とそういうことになることを運命づけられているってな」
血の気がサーッと引いていく。
何なんだよ、それ。それじゃあ本当に··········。
「碧衣ちゃんの話が本当ならばな」と言う石谷の言葉には碧衣の耳にはとっくに届いていなかった。
石谷の言っていたように、あの家に産まれたことであの兄とそういう関係になることを運命づけられて、何も知らない桜屋敷が強いられて、苦しんでいるのだとしたら。俺は。
ある一つの決意を胸に掲げた時、思いきり叩いてきた山中にどことなくしたくて、八つ当たりをするのであった。
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