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別れの冬 2

「あ、そうだ! 碧衣ちゃーん!」 いつの間にか遠くになっていた山中の声に無理やり現実に戻され、急に声を掛けられたものだから、肩を大きく震わす。 すると、さほどそのことには気にしてないらしい山中は、満面の笑みでこう言った。 「俺ら、さっさと告りに行かない碧衣ちゃんを見張るために、碧衣ちゃん家に泊まるわ!」 「·························は?」 言ってる意味が分からない。いや、言ってる意味は分かる。のだが、どうしてそんな発想になる。 言い返そうとした時に、その間に小走りでやってきた石谷が代わりに、「話の途中で何を言い出すかと思えば··········。秀。そこまでやらなくていいんじゃないのか?」と言ってくる。 「·····というのは嘘で、俺がただ単に碧衣ちゃん家に行きたいわけよー! だって、碧衣ちゃん家、冒険したくなるようなバカでかい家じゃん? なんか面白そうだなって!」 「はぁ? そんな理由で俺ん家に行くわけ? 何にも面白くねーぞ。第一急に来たら、親が──」 いや、あの二人ならば急に来たとしても何とも思わない。むしろ大歓迎な気がする。 友人を連れて来たことがないため、どういうことをすればいいのか分からない碧衣は、適当な理由をつけて断りたかったのだが、いい理由が思いつかず、黙っているうちに、「じゃあ、決定な!」と勝手に決められた。 「おい、秀。さすがに碧衣ちゃんだって、急に来たら困るだろう。·····だけどな、俺も正直行ってみたいと思っていたんだよな」 「おおー! こういう時、優とは話が合うな! さっすが!」 「ってなわけで、碧衣ちゃん。急で悪いんだけどさ、泊まりに行ってもいいか? あ、でも、着るもんとか自分らで用意するから、一旦帰ってからだけど」 「あー··········。ま、別にいいけどさ·····」 「やりぃー! 碧衣ちゃん家に行くの楽しみだなぁー!」 今度は山中だけが先に、後頭部に手を組んで体を揺らしながら歩いていく。 その後を石谷と密かにため息を吐いた碧衣は着いて行った。

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