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別れの冬 3
「碧衣ちゃん。それに、優も。目の下にクマが出来てるじゃん。家に友達が来て、興奮して寝れなかった?」
「「····················」」
ははーぁ! と一人ではしゃいでいる山中に、二人はとぼとぼと歩く。
昨日、帰った時親に友人が来ることを伝えると案の定、予想以上に喜び、使用人らに部屋の飾り付けをさせ、板前を呼んで盛大に祝われた。
この時、何を言っても全く聞く耳を持たないため黙っていたが、結果、二人が喜んでいたからいいだろう。
問題は寝る前のことだ。碧衣の部屋でも三人が並んで寝ても十分寝られるということでその部屋にしたのだが、まず、碧衣の部屋の広さに山中は鬱陶しいほどはしゃぎ、その勢いで突然、枕投げが始まり、かと思えば恋バナが始まり、急に、「碧衣ちゃんと桜屋敷の話、もっと聞きてー! それで今後の参考にする!」と言ってきて、仕方なしに当たり障りなく言ってると言ってきた本人がイビキをかいて寝る始末。そのイビキもかなりうるさかったし、何よりも寝言が起きているのかと思うぐらいかなりうるさく、寝れたものじゃないと、二人はこっそりと違う部屋に行き、寝ていると、「勝手にどっかに行くなよー!」と泣きつかれ、また一緒に寝るはめになり、そんなこんなで、山中のせいで碧衣と石谷は寝不足であった。
こんな状態で桜屋敷の所に行くのは憂鬱であった。だが、そんな理由つけてズルズルと行くのを諦めてしまいそうになるだろう。今がまさにそのことを山中にも指摘され、半ば無理やり連れて行かれている状態である。
時間帯的にはあの兄も学校に行ってる時間。今が絶好のチャンス。
「しっかし、今日も寒いよなー。こっちはこんな寒いけどさ、沖縄はちょうどいいんだろ? 早く行ってみてぇー。んでもって、そこで女の子と仲良くなって、そしてそして·····!」
「大丈夫だ。そこまでならないから。で、秀は一人で寝てもらうから」
「はぁー?!何でなんだよ! せっかくのお泊まりで何で一人で寝なきゃならねーんだよ! 昨日だってそうよ。そりゃあ、こっちが話を振っておいて寝ちまったのは悪かったけどさ。何も一人にさせるのはないだろー!」
「じゃあ、この際はっきり言うけどな。お前、イビキと寝言がうるさいって言われね?」
上を向いて少し考える素振りを見せた後、
「·····言われる」
「そういうことだ。だから、お前は一人で、俺と碧衣ちゃんと二人で仲良く同じ部屋で寝るわ。なー、碧衣ちゃん」
「俺もそうして貰えると助かる」
「ひーん! 碧衣ちゃんまで! 悲しいけど、事実だしなー! だけど、ホテルって怖くねーか!!?」
「それもそうだな··········あ」
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