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春の誕生日と儀式に。9
下男から渡された針を持った兄に少し恐怖を覚えたものの、それよりも早くこの儀式を終わらせて交わって欲しいという、またそれが頭にいっぱいになっているのを、一瞬指先に針が通されたことにより、正気に戻る。
自分の指から垂れた血はさっきの兄と同じく小さく波紋が広がり、滲んでいく。
針と入れ替わりに白い布を受け取った碧人は、「よく頑張ったね」と指先を拭いながら、優しく微笑みかける。
「··········ぁ·····」
目が離せないほどいい顔。その顔で疼いている秘部を弄って欲しい。
熱に浮かれたかのように、ぽーっと見ていると、盃を傾けていた兄が、「葵も同じようにして」と差し出してくる。
小さく頷いて、受け取り、盃を傾けて唇を湿らせたものの、置く際に力が抜けてしまい、白無垢を零してしまった。
「あぁ·····お召し物が」
そばに控えていた下男が慌てて拭うのをぼぅとして見ていた葵人の元に碧人がすぐに寄ってきて、「大丈夫?」と声を掛ける唇に、葵人は顔を近づけて自身の唇を、
碧人の唇に。
触れた。
「·····あ、お·····?」
目を大きく見開いた兄に、小さく微笑む葵人は、今度は碧人の頬に手を添えると再び重ねる。それでは飽き足らず、角度を変え、執拗に重ねてくる弟に、「葵っ!」と無理やり引き剥がす。
困惑を滲ませた表情で葵人の顔を見てみると、目は潤み、頬は紅潮し、酒を呑んだかのようなとろんとした顔をして、「もっと·····したい」と呟いていた。
先ほどのお神酒を唇に湿らせたぐらいで酔ったという葵人に碧人は真剣な顔をする。
「気休め程度の薬じゃ意味が無いってことだね」
「碧人様·····?」
「婚姻の儀はこれで終わりでしょう?」
「ええ、そうですが·····」
「この後は葵と二人にさせてくれないかな。──葵、行こう」
首に手を回してくる葵人に優しく言うと、横抱きをし、父親に頭を下げ、早々に部屋を後にする。
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