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春の誕生日と儀式に。15

「にしても、葵人ちゃんのアプローチすごくない? 見ている俺らがその熱さでやられそうなんだけど」 「碧衣ちゃん、そこまで葵人と愛し合っていたのか·····」 「ち、ちげーよ! バカなことを言ってねーで、さっさと行くぞ!」 踵を返して、門へと走る。 あの後──桜屋敷の名前を教えた後、山中はちゃん付け、石谷は呼び捨てで呼び始めた。 自分だけの"葵人"じゃないように思え、軽く嫉妬をし、教えなければ良かったと後悔したことには自分で驚いていた。同時に小さく笑った。 ここまで一人の人に対して、ありとあらゆる感情がはっきりと出てしまうだなんて。 首元に、ついばむようなキスをしている葵人に今すぐにでも礼として、キスをしたくなる衝動を抑え、駆けていく。 門が見え、喜びの顔が思わず出た──瞬間。 「──そうはさせませんよ」 門の影から、顔を白い布で隠した、着物を着た男が数人現れる。 この数人程度なら、さっきの石谷がしたことをすればどうにかいけるだろう。 そう高を括っていると、それぞれ、多節棍、刀、鎖鎌を取り出していた。 夜の薄暗闇でもはっきりと見えたそれに、「ヤバヤバ〜っ」「クソっ」と碧衣が言う前に後ろの二人が慌てふためき、悪態を吐いていた。 「葵様をこちらに渡してくだされば良いだけの話なのですが」 「·····そんなの、ありえないな」 「左様ですか。では、力づくで·····─ッ!」 こちらに地を蹴って駆け出そうとした瞬間。 何故か、急に次々と地に伏せていく。 一体何が。──いや。 その三人が倒れた直後に見えた影があった。 「黒岩さんっ!」 真っ黒なスーツを身に包んだ、細身の男性が佇んでいた。

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