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春の誕生日と儀式に。17
「大変仲が良いようで何より」
「そうじゃね! ·····いや、そうかもしれないが、そうじゃないっ!」
思わず声を上げる碧衣に、
「碧衣ちゃん達、いいよー。いちゃいちゃしていても。俺らは前を見ているからさ」
「碧衣ちゃん、一番後ろで良かったね。俺ら前しか見れないから、後ろを振り向かないから」
「若さだからな」
「葵人ちゃんに愛があるのなら、ためらわずに受け入れろ」
「お前ら·····!他人事だと思って·····!」
今すぐにでもぶん殴ってやりたい衝動だというのに跨っている葵人が息を荒げながら、「やっと、出来るね·····早くシよ?」と頬に手を添え、唇を重ねようとしてくる。
その手をガッと掴む。
「だから、葵人! お前は何をしているんだ! それは自分の意思なのか? あのクソ兄に何か盛られたのか? お前、キスして恥ずかしがっていたクセに、人が変わちまったみてーに、積極的になりやがって!本当にそうしたいのかよ!」
「うん、シたいっ」
車が走っているのだと分かる振動と、気を使ってか、二人は前を向いて他愛のない話をしているのをどことなく感じ、気づきつつも、葵人の放った言葉に目を瞠った。
「シたくてシたくて、たまらないのっ、僕のここが疼いて仕方ないんだ。ここも、ほら。西野寺君のことが大好きな気持ちがいっぱいで、蜜が溢れてる。だから、シよ?」
掴んでいた手をいつの間にか両手を添えられ、碧衣から見て下腹部の右側、そして、足の間を触れさせられる。
指先に感じた、垂れそうなぐらい溢れんばかりの蜜を掬って、葵人の浴衣越しからでも分かる膨らみを扱いてあげたいと思ってしまった。
「──皆様、西野寺家に着きましたよ」
車が止まり、黒岩がそう告げられたことによりハッとした碧衣は、「ご友人の方らも一緒に降りて、こちらで夕食を共にしてください」と言い、「おっしゃー!」「それはありがたい」と口々に言いながら降りていった後、抱っこの状態のまま降り、誰よりも早く屋敷へと行く。
あの兄が言っていたことが本当なら、両親は何かしら知っているはず。
そう思えば思うほど走る足が止まらない。
後ろから驚きの声で碧衣の名を呼ぶ声が聞こえると思った直後、開けた玄関先で何故か並んで立ってる両親と鉢合わせをする。
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