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春の誕生日と儀式に。18

いつものように穏やかに微笑む両親。 普段からあちらから何を言っても目を合わせず、素っ気なく返事をしているため、こうも真正面で見るのは久しぶりで、気まずさでやはりすぐに目を逸らしてしまった。 「おかえりなさい、碧衣ちゃん」 「おかえり、碧衣」 いつものように優しい声で言ってくる。 碧衣は小さく、「·····ああ」と返した。 「碧衣ちゃんが抱っこしている子が、碧衣ちゃんの好きな子なのね。ふふ、そんなにも抱きついて。碧衣ちゃんのことがとっても好きなのね」 「·····だが、様子がおかしい。いつもはここまでじゃねぇんだ。桜屋敷の兄貴が俺の家が呪いだがなんだかで、こんな形で子孫を残すことしか出来なくなったと言っていたが、葵人がこうなっているのも関係あるのか·····?」 恐る恐る見た碧衣が言い、少しの沈黙の後、父親が「ああ、そのことか·····」とどこか沈鬱な声音で言った。 「たしかにそうだ。本家である我が西野寺家の何代か前の先祖が、分家だった桜屋敷家の当時の長男と次男を、今のような形にしてしまったのだ」 「じゃ、じゃあ·····」 父親は静かに頷いた。 じーんと頭に鈍痛が走る。 自分はこんな家柄で昔から同級生に避けられていたことがあったから、反抗し、避け続けていた。何もかも知らないまま。 ──本家ってだけで、何もかも思い通りになるんですね。分家から奪って、何が楽しいの? あの憎たらしいと思う目で吐き捨てるように言うあの兄の言葉が頭によぎった。 ああ言われて当然だ。自分じゃないにしろ、"呪い"を行った先祖の血が流れている西野寺家(本家)が憎くてたまらないはずだ。 それすらも知らず、お気楽に生きて、昔から両想いであった二人の仲を裂いてしまった。 なんてことをしてしまったのか。 そんな形でも大好きな弟と一緒になれて嬉しく思っている兄に戻した方がいいんじゃないと一瞬、思った。 が、再び好きだと告げた時の葵人の表情が浮かんだことにより、頭を振る。 葵人はこのことは全く知らず無理やりされていた。だから、これでいいのかもしれない。 「だが、親父。どうやって、呪いを──」 「焦る気持ちは分かるが、今はまず、碧衣の友人らを食卓に案内する方が先だね」 さっきと同じ穏やかな声で窘め、碧衣から視線を外したのを見て、つられて後ろを振り返ると、壁のようにスっと立つ黒岩と気まずそうに玄関前で立つ二人の姿があった。

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