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春の誕生日と儀式に。20

それをすぐさま気づいた葵人は長襦袢に染みができるぐらい興奮しきった膨らみを押しつける。 と、そこで唇を離し、銀糸を引いた葵人が碧衣の膨らみに頬擦りをした。 「·····西野寺君の、興奮してるね·····。この欲を僕に注いで。僕と赤ちゃん作ろ?」 「·····っ!」 ベルトを外そうとする葵人の細い肩をガッと掴んだ碧衣は上半身を起こす。 「お前、本気で言っているのかっ?」 「うん、そうだよ。それが僕の役目だから」 「呪いが解けるかもしれねーから、葵人とこういう行為をしているのだが、俺は·····」 「西野寺君は僕のこと、そういう意味で好きになってくれたんじゃないの?」 「そこまで·····」 知らない、と言いかけて噤んだ。が、それが返って語弊を生むような言い方になってしまった。 葵人は傷ついたような顔をした。 「呪いでもなんでも、僕が生まれた意味を、役目を受け入れてくれる兄さんのところへ帰るね。好きになってくれてありがとう」 悲しそうな笑みを浮かべて、ふらつきながら立ち上がり、踵を返すと部屋を出ていこうとする。 そんな小さな背中に気づけば後ろから抱きしめていた。 「西野寺君、離して·····」 「離すかっ。·····俺は自分の家のこと全く知らず、のうのうと生きていた。それが葵人の役目を分かってあげてない意味になることを、今になって激しく後悔してる。悪い、葵人」 「·····西野寺、君」 「だから、葵人の役目を受け入れるから、また好きになってくれないか·····?」 最後は自分でも驚くぐらい震えた声音だった。 このまま受け入れてくれなければあの兄の元に行ってしまうのではないかと、そんな不安な気持ちが声に出てしまっていた。 緊張で心臓の音が耳まで聞こえる。 「西野寺君、手を緩めて」 静寂に包まれていた部屋の中、葵人の声がよく聞こえた。 わけが分からず、言われるがまま手を緩めるとくるりとこちらに向いた葵人がおもむろに碧衣の唇を、ちょんと唇をつけた。 突然の行動に目を白黒させていると、葵人はにっこりと笑う。 「また好きになってくれてありがとう。西野寺君は、兄さんと違って僕を尊重してくれるよね。嬉しい」 その気持ちの表れなのか、また触れるか触れまいかのキスをしてくる。 「これなら、安心して西野寺君に身を委ねられそうだと思うと·····また疼いてくる·····」 それが分かるぐらい頬を上気させ、膨らんだ自身のを碧衣のに擦りつける。 「シて。お願い。早くシて」 「ああ、今度こそ、俺に身を委ねてくれ」

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