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迫る真実 4
畳の上の真ん中辺りに、飴色のローテーブル、三人掛けのソファが对になり、その奥には立派そうな机にどっしりと座っている男性の姿が見えた。
「おはよう、二人とも」
そう言いながらこちらに歩み寄る。
「この人が·····?」
「·····俺の親父だ」
「えっ!? お、下りますっ!」
「あははっ! なら、こちらのソファに案内しよう」
下りようにも西野寺ががっしり抱きかかえているので下りられずにいると、西野寺の父親に案内されてしまった。
西野寺が自然なままにソファに優しく下ろし、その隣に西野寺が座り、反対側に父親が座った。
先ほどの自分のことに恥じ、顔を俯かせていた。
「昨日の、話をしに来たんだな」
「そうだ」
昨日の?
それはいつのことだろう。
「西野寺家が当時の桜屋敷家の長男に呪いをかけて今のような形にしてしまった話はしただろう?」
「あぁ──」
「えっ?!」
素っ頓狂な声を上げて、バッと顔を上げた。
二人の視線が一気に集まり、ハッとした葵人は、「ごめんなさい·····」と身を縮める。
呆気に取られていた二人だが、父親が、「その様子だと何も知らないようだな」と心配と気遣う声音で言われた。
「今から話すことは、酷かもしれない。それでも聞きたいか?」
「僕は··········」
17歳の頃から何も知らず無理やり兄と身体を重ねられた。
小さい頃から慕っていた人の突然の裏切りにも似た行動と、それからのこちらの感情を無視した、18歳となり、子供を産む為という名目の、調教。
それらは全て自分が何もかも知らなかったから、余計に恐怖に思えたこと。
今も思い出すだけで、自分でも分かるぐらい身体中が震えて仕方ない。
膝上に乗せていた手を力強く握り、ごまかそうと思っても無駄な行為。
「·····僕、は·····」
声が震えていた。喉がカラカラで上手く言葉が出てこない。
──そんな葵人の前に、コップを差し出された。
思わず、そちらを見やると眉を寄せた西野寺と目が合った。
少し見てしまっていると、無言で再度促され、されるがまま震える手で受け取る。
持った途端、震えて零してしまいになり、けれど、指先に伝わる冷たさで、幾分か落ち着き、少し口に含む。
小さく息を吐いた。
「·····落ち着いたか?」
気遣うような声にその時ではないのに、嬉しくなり、小さく笑いながらも頷いた。
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