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迫る真実 6

語尾が徐々に小さくなっていく。 思っていたよりも重い罪が葵人にのしかかってくる。 当たり前なのだろう。本家を裏切ることをしてしまったのだから。 本家にとっては永遠にされるべき罪を背負うべきなのかもしれない。 これから産まれてくるかもしれない子供にも。 「そうだ、親父。関係があるかもしれないことを訊きたいんだが」 「昨日といい、碧衣とこんなに話すのはいつぶりなんだろうな。これも、葵人君のお陰かな!」 わははッ! と豪快に笑う父親に、「·····言ってやがれ」と毒づく碧衣の顔は赤く染まっていた。 それを見たお陰か、肩の力が抜けていき、気づかぬうちに力が入っていたことに気づかされる。 「·····で、その葵人の身体に桜のような刺青のようなのが浮かんでいたんだ。それが浮かんでいた間·····昨日のような有様になっていたんだが、あれも、何か関係が·····?」 「ほう? いつもあのようなことをしていたのかと思っていたぞ。私の妻のように仲睦まじい」 「·····さすがにあそこまでじゃねぇ」 「呪いのこともそうだが、そのことに関しても全く分からないな。が、多分」 「多分?」 顎に手を当て、宙を見つめていた父親が、不意に口角を上げた。 「『巫山の夢』ってことだ」 「また、それかよ·····って」 巫山の夢。 中国の戦国時代。楚の懐王が夢の中で、巫山──中国の四川省と湖北省の間の山──の女神と情交を結ぶ。別れ際、女神が「朝には雲となって、夕方には雨となってあなたのそばにいます」と言ったという故事。 そこから男女が肌を合わせる意味になった··········。 ということは。 ボッと火がついたかのように顔が熱くなった。 「·····そういうことなのかよ·····たしかにしつこいぐらい求めて来たし、子供がとか言ってたし·····だがな·····っ」 「当てずっぽうで言っていたことが合っていたとはな。いやぁ、しかし! 子供とはな! どちらに似ても可愛い子になりそうだ! 今から孫の顔が見るのが楽しみだな!」 「クソ親父っ! 何を言って──葵人っ!?」 ダメだ。 ふらっと全身に力が無くなり、西野寺の方へ倒れ込む。 「葵人っ! おい、葵人!」と懸命に叫ぶ西野寺の声が遠くに聞こえたのを最後に意識を手放した。

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