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迫る真実 7
次に起きた時には布団に寝かされていた。
そのすぐそばには葵人が起きたことにホッとしている西野寺と目が合った。
途端、謝罪された。さっきの父親の失言のせいで倒れたのではないかと、見たことがないような心配ぶりに、らしくないと笑みが零れていた。
「·····何、笑ってんだよ」
「だって、西野寺君らしくないなって」
「俺らしくないってな··········まぁ、いい。それよりも調子の方はどうだ? 何か食うか?」
「ううん·····何も」
「そっか··········じゃあ、何かして欲しいこととか。何かあれば──」
「·····いて」
「は?」
「そばに、いて。手を握ってくれるだけでも、いいの。いて·····?」
自然と兄に当然のようにしていた甘えを見せる。
「·····分かった」
そう静かに言うと、布団から出していた手をそっと握りしめてくれた。
「ありがとう」
噛み締めるように目を閉じた。
閉じても伝わる、手の温もり。それだけで安心してきて微睡んできた。
「··········碧衣、君·····す·····き」
無意識に出ていた言葉。
寝言のように呟いたそれに葵人は、西野寺が何か詰まらせたかのように硬直し、凝視していたことと、そして、少しした後に寝泊まりまでしていたらしい山中と石谷が突然と現れたらしいが、それらには一切気づかず、現実世界と遮断した。
庭の舞い散る桜の花びらの中、西野寺と並んで見上げている夢を見た。
すごく綺麗だね、と言うと、あぁと短く答えた。その後。
足が浮いた。
それが西野寺に抱き上げられていたのだと後になって分かり、驚いて声にならない小さな叫びを上げていると。
「·····─お前が一番、··········綺麗だ」
その小さく言った言葉を理解しようとするが前に抱き寄せられた。
ごまかすかのように痛いぐらいにきつく。
そんな反応がおかしくて肩を震わせて笑っていた。
不機嫌そうな声が聞こえたけど、構わずに、空に響くぐらい大きく。
しまいには西野寺も一緒になって笑った。
穏やかな日差しの中、いつまでも。
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