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番外編 周期について 1 ※発情期と生理の話
遠くの方で鳥の可愛らしい声が聞こえる。
そう思った瞬間、閉じた瞼が薄明るいのを感じ、瞼を開ける。
朝になっていたのか。
しかし、どこかぐっすり寝たようには思えない。
昨日何かしただろうかと重たい身体を起こした。──が。
「い·····っ·····!」
腰にズキリとした鋭い痛みが走った。
顔を顰め、腰辺りを手を当てながら、身悶えた。
また来てしまっていたのか。
ここまで腰痛になるのはアレしか考えられない。
歯を食いしばりながら、昨日のことを思い返す。
昨日──起床し、西野寺の家族と共に朝食を摂り、自室を与えてくれたこの部屋で一人読書をしていた時。
チクッ。
下腹部辺りに痛みが現れた。
ああこの感覚、またこの時が来てしまったようだ。
下腹部辺りをさすりながら、ため息を吐いた。
十八歳の誕生日を迎えた辺りから、まるで針を刺されたかのような痛みがするコレは、痛みから始まり、段々と息を乱し、熱に浮かされたように頬が熱くなっていき、その後、誰かに意識を乗っ取られたかのようにその間の記憶が無くなる。
意識がはっきりした時は、必ずといってもいいほど、腰の痛みを覚える。
そうなるのは··········西野寺が言うには「求めていた」から。
普段の自分では絶対に何が何でもそのような行為はしないので、自分が憶えてないことも含めて、かなり恥ずかしい。
そうやって葵人が西野寺に身体を求めてしまうのならば、兄のように身動きが出来ないぐらい縛りつけて欲しい。終わるまでずっと。
これ以上、西野寺家に迷惑を掛けたくない。
すっかり息が乱れ、頬が熱くなるのを感じながら必死に耐えていると、後孔から蜜が溢れ、前の自身は勃ち、先端から汁を垂らし、擦りつける形となってしまい、浴衣を汚していく。
受け入れる準備が始まってしまった。
早く入れて欲しいという頭でいっぱいになってきている。
だめ。西野寺君はそんなこと望んでない。
だけど、本能がそうして欲しいと思っている。
だめ。だけど、だめ、だめだめ·····。
「葵人、部屋に入ってもいいか?」
理性と本能で闘っていると、廊下側から一番来て欲しくなかった人物の声が聞こえてきた。
「はい、って·····こな·····で·····」
「葵人? 寝ているのか?」
意識が朦朧とする中、途切れ途切れにどうにか言葉を紡いだものの、西野寺には聞こえなかったらしく、「入るぞ」と言って、障子を開けてしまった。
こんな姿を見られたら·····!
せめてもと、顔を伏せ、裾をきつく握りしめ、本能に抗っていた。
「なんだ、起きていたのか。─·····?」
その様子を見て、やはりおかしいと思われたようだ。「葵人·····?」と不思議そうな声でこちらに近づいていく。
来ないで。来ないで。
本当はそう言いたいが、口にしたら、西野寺のことを欲しがるような言い方をしてしまうだろうと思い、下唇を強く噛んで、ただ祈るしか無かった。
と、西野寺はいつものだと気づいたらしく、「お前、もしかして·····!」と駆け寄ってくる。
来てしまう。
「やっ·····!」
震える手で、しゃがもうとした西野寺を何とかというように押した。
「葵人、お前··········」
ハッとして、西野寺のことを見上げると。
西野寺の怒っているような、少し傷ついているような、そんな二つの感情が入り混じった表情を見てしまった。
そんな表情をして欲しくはなかったのに。
けれど、今の自分には近づいて欲しくはない。
「僕、に、·····近·····づか·····い·····で」
胸辺りを雑に掴んで、辛うじて言う。
来て。僕の中に入って。
違う。そう思っていない·····。
「けどな、お前、自分でどうにか出来ないだろう·····!」
「い·····から·····早、く·····、ち、が·····来、····て─」
どんどん自分ではない自分に乗っ取られる。
それでも、少しでも西野寺から離れようと這いつくばる形で離れようとしたのち、ふっと意識が無くなった。
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