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周期について 5
昔、一度だけ母親のことを訊ねたことがあった。
すると父親は、
「葵人が産まれてしばらくしてから亡くなった」
身体が元々弱かったからとも言っていた。
自分のせいで母親は亡くなってしまったんだと悲しく思っていたら、顔に出ていたらしい、父親は優しく撫でながら、「お母さんは子供が好きだったから、絶対に産みたかったんだ」と言ってくれた。
それに続いて兄も「葵人が産まれて、僕も嬉しい。産まれてきてくれてありがとう」と抱きしめてくれた。
そんなこともあって、それ以来どんな人だったのかと思いながらも、口にすることは無くなったが。
「·····本来であれば女性がなるものを、男である僕がなって、こんなこと西野寺君に言うわけにはいかないし、本当に助かってます」
心底思っていた。自分一人では何にも分からない。
今までは兄にやられていたから。
「もし、仮に碧衣様に言えたとしても、どのようなものなのかと実際に経験してみないと分からないものですからね。ですが、かなり個人差がありますので、女性同士ですら理解されないこともあります」
「そう、なのですね·····」
布団の中で腹部を撫でた。
最初の頃は、相手がそれが当たり前にある女性であっても、こういうのはデリケートな話でもあるし、腹痛が気になったのもあって、なかなか口に出せずにいた。
しかし、こうして、福井が何度か世話をしてくれるうちに、色々と教えてもらいたい気持ちも強くなったのもあり、そういった話も自然とするようになった。
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