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囚われの身***1
Ⅱ
斯 くして、若き鷲 の一味に囚われてしまったマライカは、馬 に乗せられ、砂漠の奥に位置するジェルザレート山脈の麓にある集落遺跡に連れて来られた。
集落の中はまるで迷路だ。細く入り組んだ構成は外敵から身を守るような造りをしている。
そこでマライカが思い出したのは、一冊の書物に書き記された一文だった。
このジェルザレート山中にある集落はたしか、マライカたちの遙か祖先である古代アウヤール人が造った要塞の村で、彼らはあらゆる部族抗争から身を守るため、こうして居住地区の外に造ったとか……。
本で目にしたことはあるものの、しかしまさか古の集落が今も尚、朽ちることなく実在していたとは思いもしなかった。
マライカがこの場所を知る筈がないのもわけはない。なにせ魔の砂丘と呼ばれる砂漠はただでさえ誰も寄りつかず、それに加えて大盗賊として名を馳せている彼ら、若き鷲がこの地を居住地区としているのだから尚のことだ。
周囲は静かだ。蹄の音は砂地に吸収され、ただ悪戯な風が地表の砂を掬い、巻き上げる。
マライカを運ぶ若き鷲たちを出迎えるのは、赤ん坊を胸に抱いた女性や老人。それに年端もいかない子供たちばかりだ。彼らは皆、マライカを敵と見なしているのか、鋭い視線を投げて寄越す。歓迎されていないのはたしかだった。
これから自分はいったいどうなるのだろう。
マライカはダールの元へ嫁ぐ時にあった恐れとはまた違う身の危険に身を震わせた。
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