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逃亡***1
Ⅳ
若き鷲 に囚われてからどのくらい過ぎただろう。
存分に泣いたマライカの涙は、もうすっかり枯れている。
これからのことを考えると恐ろしさで身が竦む。
頭であるファリスに初めてを奪われ、自分の身体は穢れてしまった。ダールはオメガでは珍しい、まだ発情期を知らないが故に自分を欲し、借金の肩代わりを申し出てくれた。
そんな彼がもし、マライカが穢れた身であることを知ればどうなるだろう。正直、彼がハイサムの脅迫に従い、身代金を出すとは到底思えない。
そうして盗賊たちにも用済みの自分は死を迎えるのだろうか。あるいは人買いに売られてしまうのだろうか。
例え生かされたとしても今までに経験したことのない、壮絶な生き地獄を味わうだろう。
それは何もマライカだけではなく、両親も同様だ。マライカが盗賊に囚われた時点で自分たち一家の人生は終わりなのだ。
(――だったら)
このまま、ただ死に向かう時を待つくらいならば、何もしないよりはずっといい。
幸い、ここは2階。マライカはけっして長身な方ではないがそれでも年頃の男子くらいの身長はある。窓から逃げることだって不可能ではない筈だ。
マライカは逃亡を決意すると手のひらを強く握り、拳を作った。
ベッドから身を起こせば、ファリスに抱かれた当初から続く下半身の怠さは未だ抜けず、楔を受け入れた臀部は激痛を訴えている。ほんの少し身体を動かすだけでも全身に鋭い痛みが駆け巡り、うめき声を上げてしまいそうだ。
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