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若き鷲の頭***6

「彼はたしか、ダホマの酒場で会った少年だったな?」  ムジーブが訊ねた矢先に、ファリスの手が止まったのを見過ごさなかった。 「名前は――マライカ、だったか? 彼はなかなか可愛い顔をしていたな。他人に無関心なお前が珍しく通い詰めただけはある」 「何が言いたい?」 「いいや、別に」  ムジーブは、配下から人質が逃亡したという知らせを聞いた時のことを思い出していた。  ムジーブはファリスが血相を変えて部屋から出て行ったのを知っている。今まで顔色ひとつ変えなかった冷酷なハイサムの頭、ファリスともあろう者が、である。  もし、本人も人質の少年に対する想いにまだ気がついていないのなら、これはこれでなかなか面白い。 「それより、奴の動向はどうだった?」  ファリスは、ダールの動向を探りに向かわせていたムジーブに問うた。 『奴』とはもちろんダールのことだ。過去に起きたおぞましい事件以来、ファリスはダールの名を呼ぶことすら嫌悪していた。 「ああ、お前の読みはもしかすると当たっているかもしれん。大切な花嫁を奪われたってのに、奴が慌てた様子はひとつもなかった。警察にさえ捜索願を届け出るつもりもないらしい」  ひと呼吸を置いた後、ほんの少し伸びた無精ひげを触りながら、ムジーブは続けた。 「花嫁に興味がないのか、それとも後ろめたい何かが奴にはあるのか――」  やはり、この結婚には何か裏がありそうだ。 「それで? これからどうするつもりだ?」 「人質が怪我を負った。ダールとの交渉はできない。傷が癒えてから計画を続行する。その為には、人質がこれ以上の逃亡を図らないよう、ターヘルに見張りをさせる」

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