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heat***12
しかし、ヒートはさらに増してきつつある。ファリスの様子を窺っていたマライカの理性は薄れてきている。今のマライカにとって、ファリスに抱かれないことこそが拷問だった。
魂さえも焼けつきそうなほどの強烈な熱を帯びた肉体。みぞおちに渦巻く恐ろしいほどの疼きはもう耐えられそうにない。
マライカは、とうとうすすり泣きをはじめた。
自分とファリスを阻む布地が憎たらしい。広い背に回した指先は彼のカンドゥーラを貫通し、皮膚に食い込む。
「お願い、ファリス。抱いて……抱いて……」
唇から漏れるのは喘ぎでも嬌声でもなく、悲痛な叫びだ。
懇願するマライカに、ファリスも限界だった。
彼は着ているものをすべて脱ぎ捨てると、自らの唇で噛みつくようにマライカを塞ぎ、吸い上げる。
――そう、この感覚だ。
マライカは、ファリスの鋼のような若々しい肉体を感じて乱れる。下肢を固い楔に擦りつけて誘惑した。
ねっとりとした口内がたまらない。
それはファリスが内に秘めた野獣を解き放った瞬間だった。華奢な腰を乱暴に持ち上げると、そのまま穿つ。すると直ぐさまマライカの口から嬌声が上がった。
ファリスは太く雄々しい楔をマライカの肉壁に納めた。彼の柔軟な肉壁はあっという間にファリスを象り、きつく締めつける。その感覚がなんともたまらない。
熱を吐き出した筈の欲望は、けれどもヒート状態のオメガが相手だと一時から解放されるだけだった。ファリスの一物はふたたび息づく。
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