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心乱される存在***5

 マライカは身を捩り、太腿を擦り合わせる。ファリスの背に細い腕を回して彼を魅了する。ファリスの名を口にする鼻にかかった声は艶やかだ。その声を耳にしただけでも、ファリスの自尊心が少しずつ砕かれていく。  ふたたび熱を帯びはじめた下肢に手をやり、そっと触れて扱いてやる。  マライカは切ない声を漏らし、一向に自分を抱こうとしないファリスに懇願する。 「ファリス、お願い」  彼は、どうして抱いてくれないのと、弱々しくすすり泣く。その仕草も鳴き声も、何もかもがたまらない。  マライカが浅い呼吸を繰り返すたびに胸にあるふたつの飾りが上下する。  ファリスはひとつの飾りを口に運び、もうひとつを指の腹で円を描いて潰す。いっそう固く尖りはじめる飾りはまるで花の蕾だ。赤く熟れたそれを舐め取り、丁寧に湿らせ、開花させていく。 「ああ……」  マライカが身を捩じった時、ファリスがふたたび息づきはじめているのに気がついた。彼も自分と同じだと知り、ファリス自身に手を伸ばす。 「マライカ、ダメだ」  たしかに、ねっとりとした粘膜の中に忍ばせたいと思う自分が居る。  しかし、これ以上の体力の消耗は避けるに越したことはない。それに、万が一にでも間違いを犯し、マライカが孕んでしまう可能性がある。  そうなれば、自分にとってもマライカにとっても不都合な結果に終わる。  ファリスはふたたび自制心を発揮した。魅惑的な鞘には挿入することなく、太腿に挟ませるに留めた。マライカの陰嚢を感じながら強く擦りつける。

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