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心乱される存在***6
じっとりと濡れているその箇所はたまらなく魅力的だ。抽挿するかのように下肢を動かせば、溢れた蜜が卑猥な水音を立てる。それでもファリスはただ果てることのみに努めた。
しかしファリスがマライカに近づいたのはけっしてこの行為のためではない。
すべては憎きあの男が狙うマライカというオメガを知るべく、ダホマの酒場に赴いた。
それなのに――。
ほんの少しの偵察だった筈が、気づけば彼の虜になっていたのを思い出す。揶揄する男たちとマライカの渦中に立ち、見事男共を撃退してみせたのだ。目的のためなら手段を選ばない冷酷非道なハイサムの頭ともあろう自分が、目的を忘れ、ただの人助けをしたのだ。
たしかに、自分はマライカを気に入っている。
物静かな雰囲気とは違い、内に秘めた強い意思。凜とした姿はどんな苦境に陥っても翳ることはない。そして、ターヘルを置いて逃げることもできただろうに、マライカはそれをせず、ただ囚われるに徹した、他者を思いやる心根の優しさ。
そうかと思えば、こうやってすすり泣き、敵であるファリスに弱さも脆さも見せる。
これがたまらなくファリスの保護欲を刺激し、眠っていた母性を呼び起こすのだ。
いったい何度目だろう、嬌声が上がる。
そうかと思えば腕の中にあった肉体がずしりと重くなった。果てた彼は夢の中へ誘われる。顔を覗き込めば、長い睫毛はふたたび閉ざされている。
「まったく……」
どうしたものか。
これでは盛りのついた犬だ。
このままではありったけの精を奪われてしまう。
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