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心乱される存在***7
とはいえ、ここから離れれば、彼はオメガのフェロモンに引き寄せられた男の餌食になってしまう。自分以外の人間にマライカが組み敷かれる姿は見るに耐えない。
それはダールも同じだ。
そう、それこそが問題だ。
なにせファリスは、マライカをひと目見た時からダールに引き渡したくないと考えているのだから。
ムジーブはファリスの感情を察知している。
それもそうだろう。マライカが怪我を負ったのを口実に、1ヶ月が過ぎた今になってもダールと交渉する算段を立てていないのだ。
ファリスがひとり、これからのことを思案しながら天井を見つめていると、
「ファリスさま」
ターヘルの声が閉ざされたドア越しに聞こえた。同時にドアノブを回す音が聞こえて彼を抱いている腕に力が入った。
精通前の子供とはいえ、ターヘルも男子であるには変わりない。マライカは今、一糸も纏わぬ姿で眠っている。いくらファリスが抱いたからとはいえ、腕の中にいる彼はとても艶めかしかった。上気した頬、何度も口づけた唇は赤く腫れている。両胸の飾りはツンと尖って開花し、蜜で濡れた下肢は艶めき、潤っている。もしここで乱れたマライカの姿を目にすれば、ターヘルもまた、自分と同じように魅了される恐れがある。
マライカに魅了される人間は自分一人で十分だ。ここでライバルを増やすことだけはしたくない。
「開けるな!」
「も、申し訳ありません」
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